第19話
「今の話、嘘はないんだね。」
しっかりと目を見据えて、聞く。
「ないよ。」
ハッキリと、答えが返ってくる。
「分かった。」
私の返事を聞くと、「ありがとう」ともう一度私を抱きしめてから、先程の女性を呼びに出て行った。
「では改めて、書類を拝見させていただきます。」
壮馬が何やら封筒を取り出す。
そこには、壮馬が病気であるものを示す紙や、チケット譲渡のための書類が入っていた。
女性はそれを1枚いちまい、丁寧に確認していく。
「確認できました。」
全てに目を通し終えると、封筒へと再び紙の束を仕舞う。
そして、こちらに向き直ると、
「そちらが譲渡される方ですね。身分証明書はお持ちでしょうか? 」
「はい。」
財布から、学生証を取り出して手渡す。
それを受け取ると、じっくりと見つめる。
「結構です。こちらはお返ししますね。
これで、手続きは完了です。では、春野様をご案内致します。」
「え、壮馬は……」
「冬木様とはこちらでお別れです。」
「発射の時には、外にいるけど話せるのはここが最期だよ。」
「そっか……。」
俯くと、壮馬に手を引かれ抱きしめられる。
力いっぱい。強く。
「あかり、元気でね。」
「うん。」
「今までありがとう。楽しかった。」
「私も楽しかったよ。」
「あかり、愛してる。」
壮馬に唇を奪われる。最後を味わうかのような、長い長い口付け。
「あかり、ありがとう。」
にっこりと満面の笑みで壮馬は送り出してくれる。
泣いちゃダメだ。壮馬だって、泣きたいのを堪えてるんだ。私が泣いちゃだめだ。
「こちらこそ、ありがとう。
壮馬、愛してるよ。」
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