残り2ヶ月

第1話

 ロケットが登場してしばらくした頃、富裕層は皆、火星へと旅立ったため段々とチケットが売れなくなってきた。そこで国は、チケットが買えない人々のために、無償でチケットを手に入れることが出来る抽選会なる物が始めた。

 毎週土曜の正午、それは行われる。何を使って抽選をしているのか分からないが、当選者は特設のホームページに名前が掲載され、その後にメッセージが届く事になっているらしい。そして当選者は、その翌週の月曜に火星へと旅立つ。

 そこで当たれば天国だが、外れたならば地獄。また、恐怖に震えながら1週間を過ごすのだ。


 そんな惨状のこの世界は当然の如く機能しなくなった。社会のトップに君臨していたお偉いさん達はとっくに空の上。自分はこの先どうなるかも分からない。

 皆、好き放題やるだけだった。


 高校に入学して半年、私以外の人は学校に来なくなった。

 こんな中でも学校に通い続ける私を皆は「おかしい」と言った。「残り時間を自由に生きろ」と言った。

 でも、何を言われようと私は通い続けた。

 教師もおらずもはや学校としての意味をなさなくなったこの場に通い続ける理由は何も無い。それでも、"学校"という場所が好きだった。


 1人の学校生活は思いの外自由で、快適な物だった。

 本を読むんで、飽きたら勉強。お腹が空いたらお弁当を食べて、午後は身体を動かす。

 それだけ。

 普通に通っていたら体験できないようなことも体験した。


 例えば、屋上でお昼寝したり、消火栓のボタンを押してみたり。

 誰かに叱られてしまいそうなことは一通りやっておいた。

 しかし結局は、図書室にいるということに落ち着いた。

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