第10話

 気づいたら、僕は病院のベッドにいた。

 生まれつき疾患を持った僕は、外に出ることが許されなかった。何度も何度も、母は僕に謝った。「元気に産んであげられなくてごめんね。」と。


 それでも、なかなか病院での生活は楽しかった。友達はいなかったけど、周りの大人たちがよく遊んでくれた。

 治療は辛かったけど、両親が支えてくれた。だから、頑張れた。

 それでも、治ることはなかった。


 いつの間にか、高校生になった。通信制の高校には行かず、全日制の高校に進学した。

 あと少し頑張れば、退院できるかもしれないと母から聞き、学校に通うという夢を叶えられるかもしれないと思ってのことだった。しかし、その矢先母は倒れた。


 僕の治療費は膨大な額で、父の収入だけでは足りず、母も毎日身を粉にした働いてくれていた。そのせいで、身体を壊したそうだ。

 気づいた時にはもう遅くて、そのまま亡くなってしまった。

 それが、去年の3月のこと。


 僕は、父に学校を辞めさせられた。


 悔しくて、悲しくて、毎日泣いた。

 学校に通えなかったことが悔しいのか。

 母の病気に気づいてやれなかったことが悲しいのか。

 自分でもよく分からなかった。


 そして、その次の月だ。この地球が滅びるというニュースが流れたのは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る