第13話

 あの夜、壮馬と恋人同士になった。

 いつのまにか、壮馬に惚れていたようで、あの時、気付かされた。

 親戚の家を渡り歩いてきたせいで、転校が多かった私にとって、初めての恋人だ。

 それは、壮馬にとっても同じだろう。

 そして、壮馬の体調のことも考えて、家に住んでもらうことにした。ここなら、1ヶ月分くらいなら余るくらい食べ物があるから。


 毎日、朝早くに起きて、畑から食料を調達して、朝ごはんを食べて、家のことをして……。ゆったりとした、幸せな日々を送っている。


 今日は、雲一つない快晴で、お出かけ日和だ。お出かけしたいという壮馬の要望で、海に行くことにした。

「あかり、早く! 」

「そんなに急がなくても、海は逃げないよ。」

 余程楽しみなのか、早くはやくと急かされる。バタバタと忙しなく家を出ると、2人で手を繋いで、歩いた。

 1時間程進むと、海に着いた。海が見えるなり、壮馬は子供のように目をキラキラさせながら駆けていった。

 器用なことに、途中で靴を脱ぎ、投げ捨てると、春の柔らかな陽射しが反射して輝く海に、迷わず突っ込んで行くと、「冷たっ!! 」と声を上げ、追ってくる波から逃げた。

「まだ春になったばかりだよ? そりゃあ、冷たいよ。」

 なんだかその光景が可笑しくて笑ってしまう。

「ちょっと、笑わないでよ! 」

 ほっぺをぷくっと膨らませて怒る。

「子供みたい。」

 笑いは止まらない。

「だーかーら! あーもう、あかりもこっちきなよ! 」

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