第15話
すっかり日が暮れてきた頃、やっとの事で服が乾いた。
「そろそろ帰ろうか。」
「そうだね。」
靴に足をいれると、グチョっと嫌な音がして、思わず足を引っ込める。
「うわー、靴乾いてなかった……。」
「まじ? え、どうする? 」
「仕方ないからこのまま帰る。」
「そっか。」
再び靴を履こうとすると、壮馬に靴を奪われた。
「ちょっと、返して!! 」
「嫌だよ。」
「帰れないじゃん! 」
「大丈夫だよ。はい、乗って。」
壮馬は私に背を向けてしゃがみ込む。
「え……。」
「いいから! 」
急かされて、恐る恐るながら、その華奢な背中に乗る。
「おし、出発。」
壮馬が立ち上がって歩き出す。
「重くない? 大丈夫?? 」
「これでも男だよ? 大丈夫だって! ほら。」
急に走り出す。壮馬の細い足が、腕が衝撃で折れてしまいそうで怖い。
「待って! 止まって!! 怖い!!!! 」
「えー? 」
静止の声なんて聞きやしない。
「本当に、怖いから!! 」
「分かったよ。」
渋々、スピードを緩めて、歩き出す。僅かな時間だったのにも関わらず、息が上がっていた。
「バテバテじゃん。」
「そんなことないよ。」
「降りようか? 」
「また走るよ? 」
からかうように言うと、ムスッとして足を構える。
「やめて。降りないから。」
「なら良し。」
満足げに笑う。今日は壮馬がよく笑う。
本当に楽しそうで、こっちまで楽しくなる。
その時、ピリリリッと電子音が空気を割く。
「あ、俺だ。ごめん、1回降りてもらってもいい? 片手は流石に落としそうで……」
私が背中から降りると、壮馬がスマホを取り出して、何かを確認する。
「当たった!! 」
急に大声を上げたから驚いた。今まで聞いてきた中で1番大きな声かもしれない。
「何が当たったの? 」
「火星行きのチケット。しかも2枚。」
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