あの場所で

「た、たべないでくださーい!」


「「た、たべないよ!」」




何故だろう。こんな時でも、

あの会話が頭に浮かんでくる。



サーバルちゃんだからなのか。






でも、押さえつけられていて、

野生、いや

獣の「サーバルキャット」は、

ぼくを 獲物 としか見ていないのだろう。



腕からは血が滲み、

鋭い目付きと犬歯がぼくを怖気指す。



こんな時でも、ぼくは獣のサーバルを

フレンズとして見て「いられる」から













「た、たべないでください。」


ぼくが言葉を発したその刹那。





ぼくにも聞こえるこの音は。


枯れた草が踏み潰される音は。


そこには、野生の「カバ」がいた。









あの時、水場で出会った時、

お母さんのように心配してくれた。


((ジャパリパークの掟は、

「自分の身は自分で守ること。」

サーバル任せじゃダメよ?))



今、ぼくは

頼れるフレンズがいない。




そうだ。ぼくは、僕を守らなくてはならないのだ。




でも、何故だろう。



フレンズ故の名残なのか、

ただ単に来ただけなのか。


カバさんが、心配してくれて様子を見に来てくれたのか。




--------

音に気づいたサーバルも、カバがいる方向に視線を合わす。

その間に、僕との視線が逸らされたので、出来るだけ気づかれないように

「後ろに」下がった。


しかし、わずかな音も逃さない、

耳の良いサーバルは、一瞬こちらを見た。

この時はすこし怖かったが、すぐに目線を逸らしたので、少し安心した。














しかし、間もなくして

乱闘が始まった。


野生同士の闘い。

食物連鎖の頂点の位置にいる、

絶対的勝者、サーバルキャットには

勝てないことが分かっているのか、

カバはその重たい体を左右に揺さぶりながら相手の様子を伺う。



しかし、サーバルが先に攻撃を仕掛けた。



---高くジャンプし

カバの背中にしがみつく。


サーバルを振り落とそうと

カバも体を揺さぶる。



しかし、目線は僕に向けられていて。


「「(早く逃げなさい。

またこのような事があったら、真っ先に逃げること。あくまでも

「自分の身を守るため」よ。)」」


と、目で訴えるかのようにぼくを

見つめてきた。




この後の映像は想像出来てしまうが、

そんなことよりも、一目散にここから逃げた。


港からサバンナまで走るよりは断然遅いけど、出来るだけ早く。




そして、

かつて けもの だったサーバルちゃんと、「1度」お別れした場所に着いた。



やはり、今の光景も夕暮れだった。


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