第13話 分かってる
2人が扉を押し開けると、大きさがあるにも関わらずすんなりと開く。
「くっらぁ……ライトライト……」
犀がスマホのライトをつけて辺りを照らす。
中はかなり広い空間で、暗くてよく見えないが、なにか装飾の施された柱が何本もまばらに立っている。
洞窟内より地面は整備されていて、歩く度に空間に音が響く。
この空間の奥はそれこそ見えず、暗闇が広がるばかり。
「やたらに暗いですね……。明が居ればこのくらいなんて事有りませんが……」
「人がいたって見えやしないよ〜。どうするぅ?」
「変に叫んでも危険ですし……。端まで歩いてみましょう」
「り〜」
2人はそのまま真っ直ぐに歩き続ける。歩けど歩けど先は見えてこない。
端に来たならば壁にライトが反射してすぐに分かるはずだが、その様子もない。
ふと、犀が何となく後ろを振り返った。
すると、先程開けたままにしていた扉の光が無くなっていた。それどころか、自分のすぐ背後には壁がある。
「ぅえ!?なに!?」
「わっ……なんですか急に……」
「ちょっ、後ろ見て蠍さん!」
「なんです……?……わっ、ええ?」
どれだけ歩いたか、暗くてよく分からないというのにすぐ背後には壁。
「もしかしてこれ……閉じ込められたってやつ?」
「そのようですね……」
「はぁぁ〜??もぉ〜!こーーんーー!!!!!りーーぃぃんんぅーーー!!!!!」
「うるさいです犀」
「だぁってぇ」
「おや。その壁の模様はなんですか?」
「……なんだこれ。うぇ〜、謎解き系?」
「……なんだ、簡単な話じゃないですか。要するに僕らは正規ルートを歩いていないだけです」
「なぁんで分かるのこわぁ……」
2人の目に映っているのは、ジグザグとした模様。1番上の端に丸。一番下の端に三角。
線は何本も重なっており、どれが正解かを見分けろ、というような謎掛けだ。
「ここでの疑問は1つ。この線の表すマスは、どの程度の幅なのか。私たち二人とも身長は似通って居ますから、歩幅の差は無いでしょう。しかし、この線に指定されている方向へ何歩進むのが正解なのか。それが分かりません」
「んー。やってみないと分かんないんじゃない?とりあえず撮っとくよ。んで2人で試してダメなら違うんじゃない?」
「度胸のある人ですね。まぁそうするしかないですし、そうしましょう。まずは線の方向ですが…」
蠍と犀は、その謎解きを数パターンで試していく。
次第に進める様になると、次はこっち、次は……と地道に探していく。
犀の野生のカンなのか、1発で当たることもしばしば。
外れればまた1からやり直し。その繰り返しだ。
3時間は経っただろうか。今が何時かは分からないが、体感的にそのくらいだろう。
「はぁ……もぉ疲れたぁ……」
「そうですね…。休みたいところですが、あとひと踏ん張りです。正解の道がここまで分かりました。あと1マスですよ」
「はぁ〜ぁい」
そうしてまた、4通りに別れた線をひとつずつ試していく。
3回目でどうやら正解だったようで、目の前に見たことの無い壁が見えた。
扉のようだ。が、どうやって開けるのかは全くもって分からない。
「なぁにこれ。デェッカ。……観音開きでもないし、引くわけでも押すわけでもなさそう……」
「はぁ。めんどくさい建物ですね。謎解きだらけですか。魂と麟がこっちではなくて良かったですよ本当に。一生出られないと思います」
「魂と麟て頭悪いの?」
「魂は勉強は出来ますけど、謎解きはできないわけではないですが嫌いなんですよ。やる気さえあれば頭は良いです。…麟は……知りません」
「良くはなさそう!」
「笑顔で言うんじゃありません」
目の前に立ちはだかる扉の端に、謎のパズルを見つけた。スライド式のパズルだ。
どうやら完成図はなにかの模様だが、予測が難しい。
「うーん。……これなんの模様かなぁ……」
「……私の予測では、花のような形かと。円だとは思います」
「だねぇ〜。んー。こーしてこーしてー…」
犀は
「あれ?ねぇ蠍さんもしかして才能あるオレ?」
「はいはい、そーですね。貴方は勘がいいだけだと思いますが」
「だけって言うなー!!」
むすっとしながらも、パズルを動かしていく。次第に、花の模様が浮き上がり、パズルは完成した。
「でっ、出来ちゃったああ!」
「…扉、開きませんね」
「これ押すのかな?」
完成したパズルの真ん中の隙間に出てきたスイッチを、躊躇せず押す。
すると、扉が左右に開いて行った。ゆっくりと、且つスムーズな動きで開いた扉の向こうはまだ暗い。
「ねぇこれ…先に進むの?」
「進む他ないでしょう。後ろは壁です」
「それもそっかぁ」
深い暗闇だが、灯りをつければかろうじて先は見えた。
特にギミックなどもないが、大きな柱はランダムに何本も立っている。
「ここ、なんなんでしょうね」
「…オレ、なんかの施設だと思うなぁ。ああして謎解きが稼働してるってことは、まだ機能してる建物ってことでしょ」
「そうですね。それに、あの壁のように間違えたらリセット、などという不可思議な現象が起こるということは何かしら能力絡みかと思います」
「…あの謎ときを解いたってことは、術者にオレたちが侵入したこともバレてるかもね」
「ええ。ですがバレてるからなんです。倒せばいい話ですから」
「言葉遣いと表情よりも過激なこと言うよねぇ」
「そうでしょうかね?犀だって同じでしょう?」
「まぁーね」
カツンカツンと靴音が鳴り響き、反響するほど静かな空間。
広々とした空間を、正解も分からないまま歩き続ける。
すると、数十分歩いただろうか。目の前にぼんやりと光が見えた。
どうやら、光の手前には柵が施してあり、ここは高い位置の様だった。
「なんだろ……光ってる……」
「…慎重に覗きましょう」
2人が慎重にその柵の向こう側、下に目線を向ける。
いや
下に行くまでもない、少し目線を下げたそこには……
「…………皁?」
蠍の想い人、皁の姿があった。巨大な鎖で四肢を繋がれ、空中にぶら下がっている。
どうやら気を失っているようだ。そしてその横にもう1人の人影がある。
「………
犀が小さな声で呟いた。
「なんで……、ね、ぇ、蠍さん、ねぇ、2人いる?皁さんだけじゃないよね?ふ、2人……」
「ええたしかに2人…桃色の…丁度、あなたの髪の毛と同じ色合いの……」
「…弟だよ、あれ………おかしい、おかしい!弟は、か、家族はもう……!」
犀の様子は明らかにおかしかった。今まで落ち着いていて、恐怖心なんて微塵もなさそうにしていたと言うのに。
蠍も、狼狽える犀とは違う様子で混乱していた。
自身の想い人が拘束されている状況を整理しきれずに、言葉がしどろもどろになっている。
「せ、せい。とにかく……2人を助け出す方法を見つけましょう、ね?」
「ぅ、う…ぅん…」
犀の顔に宿った恐怖の色は消えず、ひとまず、助け出す方法を考える事にした。
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