第8話 幹部
「5は眠だよ、それは流石に知ってるでしょ」
「ぁ、うん。でも俺眠さんとそんなに話したことないし」
「ん。1回教会に戻ろっか」
魂と巡はエレベーターに乗り込み、上へ上へと上がって行った。
出口の教会に着き、眠を探す。
眠は教会のホールで、並んだ長椅子の1つに腰を下ろし、何やら複数のウィンドウを開いて眺めている。
「眠、何してるのー?」
「ん、あら魂。今、今月返還した肉喰ヒ達の数を精算していたの。今月は先月に比べてすごく増えてるわ」
「たしかに……100体規模で出たじてんで、そうだよねぇ」
「それで、2人してどうしたの?なにかご用かしら?」
魂は、巡が制服を作ることになった説明をする。すると、眠は微笑んだ。
「あら、そうだったのね。よろしくね巡くん。私の制服はシスター服のデザインメインがいいわあ。あまり私は戦闘に出ないけれど、たまに出るの。だから動きやすさも欲しいのだけれど……」
「わかった。確かに眠さんはシスター服って感じだよね!」
「ええ、よろしく頼むわね。ふふ、どんな仕上がりになるのかしらね?」
「……あれ、眠さんと兄さんのピアスって、みんな違うのに2人のはお揃いなんだ?」
「ええそうよ。魂が、ピアスを発注する時に、私の誕生日に合わせて形もお揃いって希望で発注してくれたの。私に内緒でね?」
「あ、もう、それはずかしい……」
「え……兄さんそんなキザなこと出来んの……?男として負けたかもしれない……だから彼女できないのかもしれない……」
「……いつかできるよ、うん。きっと、うん」
「泣こう……。……んじゃあ、眠さんと兄さんの服は、おそろい要素も入れよっかな」
「あら!嬉しいわ!ありがとう巡くん。巡くんにも、良き出会いが有りますように」
眠は、手を組んで祈る。まさにシスターという風だ。
「それなら、次は6ね。うーん、6はデスクに居るはずよ。さっき出撃して、肉喰ヒを送ってきたばかりだから、書類整理してると思うわ」
「わかった。じゃあ、また本部に行くね」
「ええ。休みなのにお疲れ様」
「ありがとう、わっ……えへへ」
眠は、魂の頬にキスをして微笑んだ。巡の顔は死んでいるが、2人は幸せそうだ。
魂はそのまま眠と離れ、巡を連れて本部へ戻る。
エレベーターの中でも、少し幸せそうにニヤついている兄を、巡は死んだ目で見つめていた。
「……兄さんと眠さんって、いつもああなの?」
「んー?……んー、職場では控えてるよ?」
「……そう……?まぁ、ならいいとは、思う……けど……」
「彼女って可愛くていつ見ても最高だと思う、えへへ」
「はいはい……ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙彼女欲しい!!!!!!」
「なんで巡、カッコイイのに彼女いないの?」
「で!あ!わ!な!い!の!!引きこもってる仕事だし、営業だって仕事だから出会いなんかないし……!」
「一応、おふぃす あるじゃん?」
「ほとんど行かないのに……。チャット機能でしか社員同士の会話なんかないって」
「いいじゃん、かわいいひといないの?」
「……居るけど……」
「ふぅーん……」
居ると聞いて、魂はすこしニヤニヤする。この反応は気になってる子がいる反応だ。
雑談をしているうちに、エレベーターは戦闘課に到着する。
扉が開くと、茫は戦闘に出ているため、モニターに映る戦闘課職員の在籍名簿の隣には『出撃』の文字が出ていた。
No.6を見ると、『デスク』の文字がある。課内にいるという表示だ。
魂はずんずんと歩いていき、ポンッ、と一人の男の肩を叩く。
白いニットの下に黒のワイシャツを着ている、眼鏡をかけた黒髪の長髪の男は、驚いたように振り向いた。
「……あぁ、なんだ魂ですか。どうされました?……そちらの方は?魂に似ていますね」
「弟なの。弟がね、ここの制服作ることになったから、幹部の特徴を教えたくて挨拶まわり」
「は、はじめまして、禊 巡です。……えっと……」
「ああ、初めまして、
「はい。まさか、こんな大組織の制服を作れるなんて思ってませんでした」
「またどうして貴方が?」
「知り合いに祈宮の人が居て。布ならいくらでも手に入りますってことで」
「なるほど。祈祷済みの布なんて、人脈の無い限り手に入りませんものね。ふふ、よろしくお願いします」
「なにか、ご希望は……?」
「そうですねぇ……。私は戦う時に、素手や体に巻き付けておいた蔦などを伸ばして毒殺しているのですが……そういう動きのしやすい服がいいですね。大丈夫ですか?」
「分かりました!それで考えてみます!」
「ああ、とても助かります。……ふふっ、お兄さんとは違って、とても明朗快活な方だと見える。顔は似ていても、性格は違うんですね」
「むぅ……。いいんだよ、おれは陰キャで……」
むくれる魂を見て、蠍と巡はクスクスと笑う。和やかな雰囲気になり、仕事詰めで疲れていたのであろう蠍の顔も和らいだ。
「では次は7ですか?彼は今、食堂でレシピの考案を医務課の栄養係としているはずです。彼のレシピは毎回美味しいですからね」
「そっか、わかった、ありがとう蠍。行ってくるね」
蠍に教えられ、2人は戦闘課から直接廊下を通って突き当たりにある大食堂に向かった。
扉を開けると、戦闘から帰ってきて空腹になった戦闘員や、遅めの休憩を摂る事務処理課職員……特に、残業の終わらないNo.12の
厨房の中にいた、
「
「ん?あ、魂じゃぁ〜ん。何してるん?」
「弟がね、ここの制服つくるから、幹部を紹介して回ってるの」
「ふぅーん?こんにちは弟さん!俺、No.7の
「でしょ、でしょお〜、可愛い弟なの」
「ははっ、仲良いんだ?」
「すっごい仲良いよ〜」
「兄さん……なんかはずかしい……。んんっ、すみません、俺は禊 巡です。よろしくお願いします」
「うんうん!よろしくー。あ、能力とか説明した方がいい?」
「あ、お願いします」
「俺は風と衝撃波で戦ってるよ。普段出撃する時には、薙刀で戦ってる。空だって飛べるんだ〜」
「薙刀……じゃあ、担ぎやすい服がいいですか?」
「えー、それもいいけど……和服チックなのがいいかなぁ。俺、洋服落ち着かないんだよね」
「……丈の短い着物……あ、袴風なら大丈夫ですか?」
「あ!そうだね、それがいい」
「分かりました!それで考えてみます!」
「ん!ありがとー」
麟は、ニカッと笑う。すこし掠れたハスキーな声は、無邪気な顔には不釣り合いだが、それもあってか頼れる年上という感じだった。
「次は?もしかして銀?」
「うん。でも出撃してる?」
「たしか、今は
「うーん……じゃあ飛ばして、9にしよっか」
「犀なら、最上階庭園の金木犀の大樹の下で日向ぼっこでもしてるんじゃないかなぁ」
「あそこ好きだもんね、犀」
「だね。行ってらっしゃい」
麟に送り出され、2人はエレベーターに乗り込んだ。
最上階はかなり高く、エレベーターでも時間がかかりそうだ。
「どう?なんとなく分かってきた?」
「うん、兄さんは兄さんでしょー、茫さんは大人らしくて、少しセクシーな感じ。明さんはパンクな雰囲気……ストリート系をイメージしようかな。眠さんは穏やかで、ほんとにシスターって感じ。蠍さんはThe正統派の真面目さんだね。でもどこか美意識高そう。麟さんは快活な人で、和服?だよね。ピアスの先に緑のタッセルが着いてたから、和服にも合いそう」
「多分、犀も和服がいいって言うと思うよ。いつも洋服と和服足したような服着てるから」
「そうなんだ?楽しみだなぁ。なんだか、幹部の人達って面白いね。仲良いの?」
「もちろん。よく犀とか引っ張り出して飲みに行くんだよ」
「へぇ〜……いいなぁ、楽しそう」
「仕事が危険な分、楽しく仕事したいしね〜」
「それもそっか。大変だね。いつもおつかれ兄さん」
「えへへ。照れちゃうなぁ」
エレベーターで2人は笑い合う。そうしている間にエレベーターは最上階の庭園につき、その扉を開けた。
2人はエレベーターから降り、庭園に入っていった。
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