★★★ Excellent!!!
丹念に作り込まれた知的なビルドゥングスロマン。 九十九清輔
非常に熱量が高く、高品質な作品です。
同時に、とてもクールな側面を持つ作品でもあります。
簡単にストーリーを解説するなら――
魔法の発達した国『レジスタ共和国』は、破滅的な厄災を振り撒く人類の天敵『影の王』の出現を受け、未曾有の危機に瀕していた。
この厄災『影の王』討伐の為、人類に残された時間は十二年。
『レジスタ共和国』の魔法研究士達と主人公のアキムは、その十二年の期間内に無敵としか思えぬ『影の王』攻略を成し遂げねばならなかった。
――と、いう物語です。
この物語の肝となる部分は、やはり主人公・アキムの成長にあるのではと感じます。
物語序盤、好奇心旺盛で知識を得る事に貪欲なアキムは、しかしどこか人付き合いの下手な、周囲を見渡す事の出来ない、未熟な少年として描かれています。
そんなアキムが『影の王』討伐を巡り、様々な危機、謀略、悲劇、挑戦、戦闘を経て、少しずつ成長して行くのですが、その過程の積み上げ方が非常に見事で、お話を読み進める中でアキムに対して親近感が沸き、アキムと共に冒険している様な気持ちにさせられます。
アキムを取り巻く人間模様は非常にリアルであり、アキムに対して周囲の人々がどんな想いを抱いているのか、彼らの行動の意味は何か、真意は何処にあるのかという、人間の内面を深く掘り下げ、自他の問題について考えさせる様な構造となっており、この点も非常に興味深く読む事が出来ま…
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