俺の幼馴染♂?はナニカおかしい

ドライ専門

第1話 再開! 幼馴染!

 俺の名前は、大北おおきた 景吾けいご、16歳。

 兵庫県 西宮市在住。

 市立西塚北高校2年。

 身長179センチ、ややがっちり型。

 背が高めなことを除けば、ドコにでもいるようなフツメンの男子生徒だ。


 それは……、4月も半ば、日曜朝のことだった。

 ふとゴリゴリ君を食べたくなって、コンビニに出かけたんだけどさ。


「ははっ♪ オマエ、カワイイなあ♪ ほ~ら♪ ぐりぐり~♪」


 コンビニ前でやたらネコ可愛がってる、野球帽被った中防っぽいやつがいた。

 ひさしに隠れてるが、前髪は、やや長く、整った顔立ち。

 妙にはしゃいでいたから、気になって、じーっと見てたら、あることに気づく。


「ありゃ? もしかして、……ゆーとか?」

「……ッ??!」


 驚いたように慌てて飛び退き、両腕で身体を護るように構えた少年。

 デニムパーカーに黒シャツ、デニムパンツにデニム帽という、ちょっと暑そうな服装は初見だが、その顔、仕草、雰囲気は、間違いない。

 こいつは、俺の幼馴染(♂)、九十九つくも 裕翔ゆーとその人だ。


「こいつはまた……、久しぶりだなあ!」

「け……、けけけ、けーごッ?」


 慌てて俺の名を呼んだ後、何か気まずそうに目をそらす、ゆーと。

 おや、何か、様子がヘンだな? というか、うん……?


「あー……、オマエ、ゆーとで、いいんだよな?」

「あ、ああっ? ほ、他の誰に見えるんだよっ?」


 慌てて、ぶんぶんと手を振りながら、抗議するゆーと。

 ……ああ、やっぱり、ゆーとか。

 いや、その、なあ。


「弟くんの方なのかなー……と」

「……え?」


 ゆーとの顔が。

 俺より40センチは下にある顔が。

 へにょっと、泣きしそうな表情を浮かべた。

 あれ……、俺、地雷踏んだ?


「……、……、……」

「いや、まて、兄弟そっくりだったろオマエら!

 決して、身長がどうとかってことじゃないんだぞっ?」

「……、……、……」


 ゆーとは、死んだ魚のような目で、指先で地面をぐりぐりし始めた。

 ……うん。

 どうも俺は、フォローと嘘が苦手だ。

 ……話題を変えよう。


「ゆーと、何でここに来てんだ? お前の実家、東京だったろ?」


 新幹線でも飛行機でも2時間は掛かる。

 遠いなんてものじゃねえ、何でここにいるんだコイツ?


「ああ、えっと、それは」


 ゆーとは、俺を慌てて見上げ。

 少しずれかけた野球帽を必死に直して。

 ……再び見上げ。


「……、……、……」


 何かをいいかけて言葉に詰まったのか。

 顔を真赤にして、こちらをじーっと見たまま。

 あうあうと、小さな呟きを漏らすばかり。


 そこで、俺は、ふと察する。


「もしかして、お前、イジメにあってんのか?」

「え……? え、ええええええっ?!!」


 ゆーとが、驚いたように絶叫する。


「ち、違うってっ! 違うっ! 違うっ!」

「キニスンナ! お前が豆腐メンタルだってのは、俺もよくわかってる!」

「と、豆腐メンタルってナニ?!」

「思い出すなあ。森林学校で寝ションベンして散々からかわれてよ! 泣いてたお前をかばったのは、小学3年のときだっけ?」

「ふぁーーーーーーーーーーーーーっ?!」

「いや、4年だっけか、あの寝ションベン」

「こ、ここここ、声、大きいって!」

「よーし、任せろ! 口を使っての喧嘩は、俺の得意分野! 女子泣かせの口先野郎と言われた舌鋒は、衰えてないぜ! さあ、相手は、どんな悪口をいった?」

「いや、だから、違っ……」

「やっぱり、身長のことか?! 人の痛みをほじくるとか、許せねえ!!」

「……、……、……」(ぐふっ)


 大きくうめいた後。

 ふらふら揺らめき、駐車場の隅で、ゆーとが屈み込む。

 今度は、ぐずりながら、蟻の行列を見つめだした。

 いかん。


 ……俺は、フォローが苦手だ。

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