第14話 しこたま! 怒られた!

「「「「「ぶぁっかっもおおおおおおおおおおんっ!!!」」」」」


「っ?!!!」「ぴいっ?!!」


 職員室に入るなり、響き渡ったのは、入沢先生の大怒号だった。

 ガラス窓や扉はもちろん、壁、天井、建物全体が揺れるかのような轟音で。


「……、……、……」「……、……、……」(びくっ、びくびくびくっ)

「さっさと、ここに、座れっ!」

「は、……ははは、はいっ」「……あう、あううううっ」(がくがくがくがく)


 俺もゆーとも、すっかり飲まれた状態で、言われるままに、入沢先生の前に置かれた椅子に腰掛ける。


「昨日、そうだなあっ!? 楽しかったか?」

「え、……それは、その」「ええと……」

「昨日、楽しかったか?とだけ、聞いているっ!」


 昨日、楽しかったかと、聞かれれば、……つい、昨日致したことを思い出して、ゆーとと二人、照れ笑いを浮かべてしまう。


 スパアアアアアアアアアアアアアンッ!


 激しい音を立て、……スリッパが俺たちの頭の上に叩き込まれた。


「あ……、たたっ?」(あれ?)

「えぐっ、……うう」

! 馬鹿があるかっ!」


 ショックで涙ぐむゆーとも気にせず、入沢先生が畳み掛けるようにがなる。


「お前らっ、退学だあっ!!」


 どんっ、と目の前に突き出された、2枚の「退学届」との用紙。

 これには、ゆーとはもちろん、……俺も、思わず血の気が引いた。


「い、いやいや、入沢先生っ! そこまでしなくていいでしょう?!」


 慌てて、居合わせた教頭先生がとりなしに入ってくる。


「あ? 何をいっとるんです、教頭! こいつらだけじゃない、ワシも九十九の保護責任ありますからなっ! 責任取って、こちらの教師を辞めますわっ!」


 入沢先生から突き出される辞表に、……参ったなと頭を掻く教頭先生。

 他の教師たちも、固唾を呑んで見守る状況の中。


 はー……、と教頭先生が、深くため息を吐く音が響いた。


「大北くんに九十九くん、……もう二度と無断欠席しませんね?」


「……、……っ、……はい」

「……はい、わかりました」


「入沢先生、二人も反省していることですし、このくらいにしておきませんか?」


「……」(ちっ)


 入沢先生がいまいち納得いかないと行った様子ながら、「退学届」の用紙と辞表を教頭先生に渡すと、教頭先生は、ため息を漏らしながらそれをくしゃっとしてポケットに仕舞う。


「二人とも、教室に戻りなさい」

「は、……はい」「……、はい」


 怒涛の流れに頭がついていかず、完全に真っ白になっているゆーとを支えながら席を立つと……。


「二人とも、後で授業終わったら、もう一度職員室に来るように」


「……、……、入沢先生……」


 背後から聞こえる有無をいわせない入沢先生と疲れたような教頭先生の声。


「わかりました」


 ふらふらになって涙目で「ごめんねごめんね」と呟いてるゆーとに代わり、そう答えると、俺達は、職員室を跡にしたのだった。


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