第13話 オッス! クラスメイト!

「あーっ! キタキタ! 聞いたよっ! 昨日、一日、けーご、ゆーとくんとデートしてたったんだってっ?!」


「……は?」「……え?」


 教室に入って突然掛けられたその言葉に、俺とゆーとの動きが止まる。

 声の主は、茶髪のサイドテールが愛らしい元気系女子、凱旋門がいせんもん 陽子ようこ

 一昨日、ゆーとに一番初めに声をかけてきたクラスメイトだ。

 名字が変わってるのは、先祖が元フランス軍人だからとか何とか。

 いや、まあ、そんなクラスメイトのルーツこぼれ話はどうでもよくて。

 俺達がデートとか、どこからそんな情報が……?

 まあ、最終的にやることは大して変わってない気もするが。

 まさか、コンビニのが見られて、……た、んじゃ、ない、よな?


西北にしきたはなみち案内してあげたんだって? 中々やるじゃない!」


 いや、……違った。

 近場の観光地を何故か、案内して回ってたって話になってるらしい。

 どういうこと、これ?


「……え、ええと、それは」「……その、……なあ」


「何よ? 歯切れ悪いわね? 何か、進展あったんでしょ? ほれほれ」


 観光地デートはともかく、進展があったのは確かである。

 とはいえバカ正直にそんなことをいうわけにもいかず、だからといってウソをいうのもはばかられて、俺とゆーとが反応に迷っていると。


「何やってるのよ、陽子! 二人共困ってるじゃない!」

「ほんとになあ。 ……馬に蹴られて死んでしまうぞ?」

「げっ? 青羽に、大和……、なーんでタイミング悪く入ってくるかなあ?」


 黒髪ボブのちょっとキツめの雰囲気をした女子と、俺より更に一回り背の大きな落ち着いた物腰の男子が入ってきて、陽子の問いかけを止めてくれた。

 女子の名は、くれ 青羽あおば

 男子の名は、坂上さかのうえ 大和やまと

 昨日、ゆーとに声を掛けてくれたクラスメイト、その2、その3だ。

 いつも陽子と一緒にいるところを見るけれど、話す機会は、これまで、あまりなかったような気がする。


 まあ、とにかく、助かった……と、思ってたら。


「おうい、けーご、それと、ゆーとちゃん、入沢センセがキミらが朝早く来るようなら呼べ、ちゅうとったぞ?」

「え……?」「……はい?」


 大和から掛けられた言葉に、思わず、二人して顔を見合わせる。


「昨日の案内の報告せえっちゅうことなんじゃろ。入沢センセは、ゆーとちゃんの保護者らしいしなあ」

「……初耳、なんだが」「……はい、けーごに、言い損ねてた、デス」


 じっとゆーとを見返すと、ゆーとがごめんっと両手を合わせて謝ってくる。


 ……てことは、あれか?

 もしかして、昨日からずっとゆーとが宿泊先に帰ってないこととか、先生知ってる……ってことなんじゃ?


「……、……、……とにかく、行こう……」

「ゆ、ゆーとっ、ごめんっ、ごめんねっ!」


 死刑台に赴く心境で、立ち上がる俺を、ゆーとが必死に支えながら、進む。


「はー、ほんとに、あの二人、仲良いよねー……、既にやっちゃってたりして?」

「陽子っ?!」


 クラスから聞こえてる会話が、心臓に悪い。

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