第15話 ポケポケ! 幼馴染!!

(ぽけー……、……、……)


「あっ! ゆーとちゃんっ、ちょ、ちょっと!!」


「ふわっ?!」


 バチコーンッ!


 体育の時間-


 バレーボールやってた女子の方から、顔面にボールがぶつかったような音-というかそのものが激しく響いた。

 被害者は、まあ、……ゆーとなわけだが。


「ふぁ……」(ふらふら)

「わわわわわっ?!」「ちょっと!!」


 見ると、ふらふら倒れかけてたゆーとを、陽子が支えるのが見える。


「……何やってんだ、あいつ」


 今朝の一件が未だ響いてんだな、ありゃ。


「おらああああああああっ! いちゃついてんじゃねーぞッ、コラアッ!」


 バシッ!


「ん……」


 なお、男子は、ドッジボール。

 殺意満々で顔面めがけて飛んできたボールを受け止めながら、投げ返す。


 ガスッ!


「ぐはっ!」

「サトル、アウト、早う出い」

「わかっとるわ大和っ! くそっ、ゆーとちゃんは"ああ"なのに、何でお前は平然としてんだよっ?!」

「んなこと言われてもなー……」


 不満げに喚くサル顔の同級生、平良ひらら サトルに、むー……と、頭を掻きつつ返す。

 ……実際、なあ。


「ほら、そこ! 山下やましたッ! 気を抜くなッ!」


 入沢先生は、朝の剣幕は、何処へやら、特に俺に強く当たるといったこともなく、普通に体育の授業を進めている。


 今朝、職員室での叱責は、俺達の教室にまで届いていたらしい。


 席に戻った俺たち-特に、すっかり気落ちしたゆーとへの、クラスのみんなの反応は、温かかった。


『随分、叱られたねー?』『次から気をつけよっ!』『ドンマイドンマイ!』


 まあ、それでも、ゆーとは、未だに立ち直れてないあたり、豆腐メンタルの面目躍如なわけだが。


(でもなあ、ありゃあ……)


 職員室での一連のやり取りを思い出す。

 あれは……。


「入沢センセ、ひと芝居打ったっちゅう感じかのう?」


 たまたま近くに来たレフェリーの大和が俺が思ってたのと同じことを呟いたもんだから、ぎょっとして振り返る。


「……っ?!」

「大した推理でもあるまいに、何を驚く。大げさに怒ることで、その一回きりで終わるようにしたんじゃろ。センセらしいわ」

「……まあ、な」

「ん? 何じゃ? まだ、ひっかかることがあるんか?」


 いや、入沢センセがそういう先生だということは、わかってる。

 ゴリ沢先生というあだ名も嫌われてるからじゃないんだよなあ。


 ただ、わからないのは……。


(何で、"あんなウソ"を混ぜたのかってことだよな……。あれじゃあ、まるで……)


景吾けーご、死いねええええやあああああああああああああっ!」


 バシッ!


「んー……」


 ガスッ!


「ぐはっ!」

「サトル、アウト」

「やかましい大和ッ! もう外野だっての! いってえな! このっ! 何投げ返してんだよ景吾ッ!」


 とりあえず、この時間は、……ゆーとの短パン体操服姿を目に焼き付けておくことにしよう。

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