第7話 ネエ ボクハイイヨ?

 クラスメイトとゆーとの初めての交流も終わって。

 そのまま、俺とゆーとは、連れ立って、帰路についたのだけれど。


「……、……、……」

「……♪ ……♪ ……♪」


「……、……、……」

「……♪ ……♪ ……♪」


「……、……、……」

「……♪ ……♪ ……♪」


 昼の話題や今しがたの騒動を掘り返すのもためらわれ、かといって、他にこれといって思い浮かぶ話題もなく、ゆーとも黙ってても楽しげだったので、特に何を話すでもなく、二人して、ぶらぶら歩いて数十分。

 俺の自宅近くに来て、やっと、ゆーとがずっと一緒にきてる不自然さに気づいた。


「なあ、……ゆーと?」

「なに、……けーご?」


 ゆーとは、首を傾げてこちらを見上げてくる。

 何だか、微妙に熱っぽいというか、艶っぽい気もするが、まあ、それは、多分、気のせいだろう、うん。

 いや、そうじゃなくて。


「お前、……住んでるとこ、この近くなのか?」

「ううん、あっち」


 ゆーとは、ふるふると首を振ると、今まで歩いてきた方を指差す。

 ……それも、かなり遠そうだ。


「……は?」

「うん、ちょっと、今日は、けーごのお家に寄ろうかなっ……って♪」

「え? いや、ちょっと、待てっ」


 慌てて、呼び止めるが、ゆーとは、足取り軽く、玄関前に立ち。


「いいでしょ?」


 くるっと半回転すると、両手を合わせ、ちょっと赤みがかった、けれど、朗らかな笑顔でお願いしてくる。


「……~ッッ!!!」


 ど、どうしろってんだよ、これ。


 いや、これが普通に、クラスメイトか、ナンパしたカワイイ女子なら、受け入れるも、紳士するのも、どっちもできそうな気がするけれど。


 眼の前にいるのは、可愛い女子以前に、大事な幼馴染で親友のゆーとなわけで。


 断るか、いや、……でも。


 ふと……、昼間思い浮かべた変な妄想-NTRという言葉が脳裏に浮かぶ。


 おいおい……。


 いかん、このままゆーとを帰すと、とんでもないことになる妄想が、浮かんで……いや、家に入れたら入れたで、とんでもないことしでかす妄想が……、くそっ、やめろ、俺のエロゲ脳、ストップ、ストップだ。


 脳内で激しく葛藤すること数秒。


「はぁ、……後で送ってやるから、勝手に帰るなよ?」


「うん、ありがと♪」


 我ながら、ほんと、どーしようもない。

 親友相手に何を想像してるんだよ、何でもない、これは、何でもないんだ。

 俺は、自分自身にそう言い聞かせつつ、ため息を漏らし、扉を開ける。


「お邪魔しまーっす!」

「……ははは」


 何かを吹っ切ったかのような元気な調子で、ゆーとが家の中に転がり込んでいく。


 しかし、ヒップライン見ても、ホント、女の子なんだよな、こいつ。

 ……って、何を見てんだよ、俺。


「どーんっ!」

「いや、……まじ、元気だな、おい」


 昨日や、教室でのおどおどがウソのように、陽気にソファにダイブするゆーと。


「ほらほら、けーご、こっちこっち♪」

「はぁ、……ったく、しゃーねえな」


 ぽんぽんとソファの隣を叩いて、催促されれれば、断る理由もない。


「はいはい、お邪魔するぞ」

「うんうん、よきにはからえ、だよ♪」


 ま、元気になってくれるなら、それでいいか。

 そう、朗らかな気持ちで、天を仰いだその時だった。


「じゃ、……"しよ"っか?」


 しゅるっ……。


 衣擦れの音とともに、ゆーとが発した言葉に、思わず動きが止まる。


 ……は?


 いや、いやいや、どうせ、何か、俺の勘違いだろ。


 そう思って、ゆーとの方を振り向いてみたら、ゆーとがブレザーの上着を脱ぎ、リボンを解き、……ブラウスのボタンを外しているところだった。


「お前、……何、してん、の?」


「何って……、いや、だった?」


 ブラウスのボタンをほぼ外した状態で、ゆーとが身体を寄せてくる。

 空色の清楚なレースがかったブラ、と、それに包まれたお椀型の乳房が隙間から覗いて見える。

 ブレザーで目立たなかったけれど、……意外と大きい。


「いや、……いやってことは、ないけどさ」

「なら、いいでしょ♪」


 にっこり微笑みながら、ゆーとが、俺の腿を跨ぐようにして乗ってくる。

 くっ? 柔らかい感触が……膝に。

 指が……、制服のベルトに伸びる。


「いや、ちょっと、待て、……お前、何か、あった……のか?」

「……ん?」


 流石に、何か変だ。

 そう思って、……ギリギリのところで、ゆーとの肩に手を置き、動きを止める。


「何か……っていうなら、……発情してる、かな?」

「……え?」

「ホルモンバランスの崩れで、さ。

 だから、TS病の子って、"性犯罪の被害"、逢いやすいらしくて……。

 あ、でも、ボクは、"これが初めて"だから、……安心してね?」


 フェロモン……なんだろうか。

 こっちも、すごく、クラクラ……して、くる。


 何だよ、それ。

 マジで、……発情、してん、のか?

 もしかし、て……、昨日、……熱っぽかったの、も、それ、か?


 俺のチャックが下りる音。

 いや、ちょっ、と、待て、よ。


「……ひゃっ?」

「……、……、……」


 気づけば、……ゆーとを押し倒していた。


 お前、本当に、それでいいのか?

 そういって、説教しなきゃならん。


 そうなのに。

 それなのに。


「……っ!」


 その一言が言えない。

 それをいって、このまま帰して、そして、……もし、ゆーとを、喪った、ら?


 後から、ゆーとに聞いたら、……俺は、泣きそうな顔してた、らしい。

 ……ああ、みっともねえ。


「……、……、……」

「……ネエ、……ボクハ、……イイヨ?」


 僅かに震えながらも、熱っぽく見上げて、そして、愛しげに、ゆーとがいったその一言で……。


 もう、限界だった。


「……っ」

「……ふあっ? あ、……あああっ?」


 無言で、ゆーとのブラウスを肌蹴ると、形の良い双房を包んだブラをたくし上げ、零れだした先端がピンク色の乳房に指を這わせ、貪る。


 ほんと、我ながら、ケダモノだよな。


(ああ、ゆーと、……柔らけえっ、……温かけえっ)


 短いスカートの中に手を入れ、ショーツの下の、柔らかな割れ目を乱暴に弄ってから、……我慢できずに、……そのまま、ゆーとのショーツをずらし、ぐぐっとのしかかっていく。


「……くう、……痛っ……」

「……ぐっ」


 僅かに強張るゆーとの悲鳴をも押さえ込むようにして、そのまま深々と俺自身を幼馴染の体内へと押し込み、


(くっ、ゆーとの中も……、柔らくて、くっ、締ま……)


 ……そのまま、暴発した。


 早いって?


 こっちは初めてだぞ?


 そんなエロゲみたいに、我慢できるもんか。


「……く、う」

「……あっ、うう、ん」


 制服も下着もまだ、きちんと抜いでいない状態で、俺達は、初めての子作りを果たしていた。


 たった数秒のことなのに。


 ぽたり、ぽたり、と汗が……、

 同じく汗ばみ、息を乱す、ゆーとの肌蹴た胸元に、落ちていく。


 一発、ゆーとの中に、吐き出したことで、僅かに正気が戻り。


 ずる、と僅かに抜き出した俺自身に着いた血に。

 ゆーとの初めてを征服した恍惚感と同時に。

 ゆーとの身体は大丈夫なのかという思いも湧く、けれど。


「……嬉しい、な♪」


 震えながらも、

 俺自身をまだ受け入れたままの状態で、

 熱っぽく見上げて、微笑んで来る、ゆーとに。


「けーご、……ボク、……キミとずっといたい、よ」


 その目元に浮かぶ涙に。


 幼馴染に。


 俺は、気づけば、……再びのしかかり、唇を奪い、……ゆーとと、"男と女の営み"を再開していた。


 それから、様々な姿勢で、ゆーとの、ブラウスをショーツをスカートを徐々に脱がせ、ゆーとの、身体を、胸を、秘所を、唇を、顔を、髪を、腰を、腿を、腰を、腕を、隅々まで、余すことなく、眺め、触り、貪り、交わり、……俺とゆーとの、触れ合いは、いつまでもいつまでも続いた。


 そう、それこそ、翌日の寝不足確定な時間まで。

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