第17話 トウキョウデ アッタコト
それは、ボクが女性化してから半年……、高校に通い始めたばかりの頃、でさ。
クラスメイトに頼まれて、放課後、教室で片付けをしてたら、突然、5人位、男子が入ってきて。
「おい、おめー、発情してんだろ?」「な、遊んでやるよ」
「オラッ! こっち来いよっ!」「あばれんなこらッ!」「押さえつけろっ!」
「やだっ! いやだっ! やあああっ!!」
馴れ馴れしく話しかけてきたかと思ったら、襲い掛かってきて。
そのとき、教室は、もちろん、廊下にも他に、人の気配はなくて。
髪の毛や腕、服を強引に引っ張られて、身体を触られて、唇……まで。
「やああああああああああああああああっっっ!」
ゴッ!
ただ、ただ、必死だった。
蹴り上げて、突き飛ばして、かわして、投げて、駆け出して。
あのときほど、綺麗に一本背負い決めたの、中学の授業でもなかったと思う。
「がはっ」「いでえええええっ」「っ、こらっ、こいつっ!」
「あばばばばばっ?!」「邪魔だろ……ッ、……このっ!!」
そいつら、人数が多いせいか、躓いたりしたみたいで、……あっという間に、逃げ切ることができたんだけど。
もちろん、……家に、たどり着くまで、怖いどころじゃなかった。
何だか、待ち伏せされてるんじゃないか、って、気がして。
商店街の交番前で、母さんに電話して、父さんと一緒に迎えに来てもらって。
「……ううっ、うううっ……、うっ……ううっ……」
家に戻ってからも、震えがぶり返してきて。
何だか、涙も、止まんなくて。
無事だったのに、ね、ほんと。
結局、……2週間、学校、休んだ。
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『肉便器!』『ヘンタイ!』『男漁りするカマ!』『犯罪者!』『堕胎終わった?』
「……、……、……ッ?」
母さんに、付き添われて、……登校したその日に。
ボクの机にたくさん、文字が刻まれてた。
「……っ?!」
周りを見回したら、……みんな、目を逸らすんだ。
男子も、女子も……。
「へーっ、レイプされたんだっけ? それとも、男漁りしてたんだっけ?
どっちにしても、よく出てこれるものだよね?」
「ほんとにねーっ」
廊下から、そんな声が聞こえて。
……見たら、……たくさん、人がいっぱい廊下にいて。
「……、……、……っ!?」
その中に、ボクを襲った男子もいて、嫌な目線でこっち見てて。
「……ゆーと、……どした? ……って、な、……これ!?」
母さんが来たときの後のことは覚えてない。
母さんがいうには、……気を失ったって。
ほんと、……心が弱っちいよね、……ボク。
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ボクにも、問題があったんだと思う。
女性化してからは、ずっと、……男子も、女子も、怖くて。
「なあ、ゆーと、……誰か、友達作ったらどうなんだ?」
「いーよ、……関西の大学行って、けーごとまた一緒にやるもん。
それまで、勉強しっかりするだけ。
学校って、勉強する場所だから、それでいいでしょ?」
「……はー、何だかねえ」
母さんに言われたとおり、友だちを作ってたら。
あんな光景、見なくて、よかったかもって、思う
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……、……、……ぐすっ」
それから、ずっと何ヶ月も家に篭ってた。
「ゆーと、……また、けーごくんの写真見てんの?」
「……、……、……」
何してたかって? ……泣いてた、それだけだよ。
「……、……、……けーご」
「……別に、ダメだとは言わないけどさ」
「……、……、……戻りたい、よ。
昔に、戻りたいよお……」
「……あー」
それでさ、……まあ、母さんがね。
遠くに知り合いが、ほら、入沢先生?
いるっていうから。
そこの学校に、行けって。
た、たまたまだよ、けーごがいるって知ったのは!
そんで、懐かしくて、その……つい、甘えちゃっただけで、その。
……だから、……その、……、……その。
……けーご、……ごめん、……頼っちゃっ、……て。
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