第15話 縁談
土井
庄左衛門の家臣は、利三の父・斎藤
「なに?父上が?」
早速、利三は、甚介ひとりを連れて、庄左衛門の館へ出向いた。
「父上、ご無沙汰しておりました。
庄左衛門の館の一室で父と向き合った利三は、父がひどく
「息災なものか。冷や飯を食わされておる身ゆえ、毎日、
美濃斎藤家は、代々、
「しばらくは、この庄左衛門殿の館で休まれてはどうでしょうか?私から、庄左衛門殿に頼んでおきます。」
「すまぬな。いきなり
庄左衛門は、美濃斎藤家
「それにしても、
利三は、わざわざ父自ら出向いてきたことを
「縁談の話があってな。」
父は、
「誰にです?」
「お主にじゃ。」
利賢は、一言言うと、出された茶を一口、
「・・・!」
利三は、一瞬
「断ります。もう、
利三は、21歳で
「まことに。小夜には、辛い思いをさせた。わしも墓前で何度も謝った。今でも
利賢は、厳しい表情で言った。
「
利三は、普段、新しい主君を「
「左様。殿から白樫城へ使いが来てな。主命じゃという。なんのことかわからず、悪い
「その重きをなす家とは?」
「
(稲葉・・・。西美濃三人衆の筆頭。)
西美濃三人衆とは、道三系斎藤家の最有力の重臣で、稲葉、安藤、
それも解せなかったが、その筆頭の家の息女との縁組となることは、美濃を支配する現在の旧時代的傾向の強い首脳部に自身が組み込まれてしまうことではないか。それでは、光秀が目指す世の実現のために彼を支えるという自身の決意から離れていってしまう。
「少し考えさせてもらえませんか?相談したい人もいますので。」
「主命じゃぞ。そして、稲葉殿という重臣中の重臣のご息女との縁組じゃ。断ることはならんぞ。」
利賢は、白くなり垂れ下がった眉の下から射すような視線を利三に向けながら言った。
「誰なのじゃ。その相談したい者とは?」
「明智光秀殿です。私の盟友です。」
利三は、父から向けられた視線をはねかえすように、父を強い眼光で見返しながら言った。
「明智殿?先年、義龍様に攻め滅ぼされた明智殿か?」
「その生き残りの光秀殿と今、米田城で
「浪人となっておる者と話して何になる?主命には、決して逆らってはならんぞ。」
父は語気を強めて言った。父・利賢は、
「わかりました。断ることは致しません。ただ、重臣の稲葉様の嫁を迎えてからは、他家とどう付き合っていくべきかなど、
これは、利三のこの場を切り抜ける
「わかった。
利賢も、主君・龍興の命でこの縁談がある以上、稲葉山で利三と共に龍興に
「わかりました。明後日の夜には戻ります。」
利三は言って、その日のうちに米田城へ帰った。
(光秀殿は、なんと言うか?)
利三は、米田城への道中、そのことばかりを考えていた。
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