第24話 木下藤吉郎
「お久しゅうござる。
その小男は、
「
小男は、その小六と呼ばれた大男に対して、軽く手を挙げ、警戒を解くように言った。
「小六殿、わしらは、喧嘩するためにここに来とりゃせん。そやし、たとえ闘っても、この美濃でも、指折りの剣の使い手である、斎藤利三殿が相手じゃ。かなうはずがない。また、こちらのお若い供の方(かた)もなかなかの腕前のようじゃ。わしは、こげなところで
利三は、小六が警戒を解くのを感じるのと同時に、その小男の貌や声にどこか覚えがあると感じた。その言葉には、
(・・・この男は、
竹中半兵衛と面会したときは、薄暗い城中の大廊下でこの男を見た。記憶があいまいだったのも当然だ。
「思い出されましたか。うれしゅうござる。」
自分のはっとした表情の小さな変化を読んだのだろう。小男は、なお一層、笑みにあふれた貌になった。これが本心からの笑顔なのか、つくった笑顔なのかは分からない。また、仲間には尾張ことば、同郷ではない者には、なまりを極力ださないことばを使い分けているところも抜け目がない。
「わしは、木下藤吉郎。
(・・・織田信長・・・。)
その名を聞いた
さらに、自分の眼前で微笑んでいる、この木下藤吉郎という男も信長とつながっている。
利三は、自分が光秀と語り合って思い描いた天下に向けて、大きな歯車が
この曽根(現:岐阜県大垣市曽根)の抜けるような青空を、二羽の
お互いの供の者、小六と甚介はその場にいるものの、利三は、この天地に自分と藤吉郎のみがいるかのような感覚になった。
利三は、藤吉郎の次のことばを待った。
次のことばは、この美濃の国盗りにつながる言葉となるという確信をもって。
湖水の夢 ー斎藤利三伝ー 青木 @minonokuni
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