第18話 三人衆
その後、龍興から「
稲葉良通が、利三、父・
「お二人とも、平伏はもうやめて、
良通がほほえみながら、こちらを見ている。口元の
利三も父も顔を上げた。
良通が、大広間に残った2人の重臣について、利三たちに紹介した。
良通の隣に座っているのが安藤
「殿は、今、ご覧になったように年少であり、まだ国主としての自覚もない。我らが支えていかなければならん現状です。」
良通が苦笑いをしながら言った。
「まったくだ。この
氏家直元が、憂慮する表情で利三たちを見ながら言った。
「飛騨守が殿を骨抜きにしておるのよ。先ほど、お主らから見て一番奥に座っておった斎藤
安藤守就が、飛騨守の座っていたところをにらむようにして見つめながら言った。
利三が、龍興に謁見して感じたことも、この西美濃三人衆と同じだった。
(あれが、美濃一国の国主か・・・。)ということである。
美濃は、
しかし、この国の国主を務め、武士をまとめるのは、決して楽ではない。よほどの器量がいるだろう。道三には、美濃をさらに富ませていく国主としての器量がそなわっていたと言える。龍興の父・義龍も、旧時代的な思考の持ち主ではあったので、国を成長させることは難しくとも、維持していく器量はあっただろう。
だが、先ほどの龍興の姿を見る限り、そういう器量があるなどとは思えない。まだ少年だからというところを考慮しても、将来、大器となるような可能性を感じられなかった。
西美濃三人衆は、普段から龍興を見ているので、利三よりも、そういうことを痛いほど感じているのだろう。
「・・・我らのやったことは、正しかったのだろうか?」
安藤守就は、良通や氏家直元の方を見て、ぼそっと言った。
「伊賀殿!つつしめ!このような場所で!」
良通が、安藤を厳しい目つきでにらんだ。
安藤は、はっとして「すまぬ。」と一言言うと、口を
利三には、安藤の言葉の意味も、良通の言葉の意味もよく分からなかったが、安藤が触れてはいけないことに触れようとしたことは分かった。
「とにかく我らは、殿をお助けし、お支えせねばならん。朝倉や織田は、
良通が安藤や氏家を
「わかっておる。殿は、飛騨守の娘に骨抜きにされているとはいえ、完全に飛騨守の
氏家直元が安藤の方に顔を向け、言った。
「まあな。だが、
安藤守就が一番、飛騨守をよく思っていないらしい。
「確かに飛騨守は、殿に甘い言葉はかけても
良通はそう言って、2人が頷くのを見てから、腰を浮かして立ち上がった。良通に
良通は、利三と利賢の横を過ぎるときに、
「では、このあと、それがしの控えの間までお越しくだされ。」
と言った。
ほほえむ口元の皺は、やはり波打っている。利三は、それを不気味に感じながら、良通に礼をした。
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