第2章 美濃動乱の編
第17話 衝撃
「よいか。利三。これから始まる
稲葉山城の控えの間で、父が
「わかっております。おれも、美濃守護代・斎藤家の血を継ぐもの。挨拶の
利三は、少しあきれ気味に答えた。
「おれ、などと言うな。殿の
「では、それがし、にしますよ。」
利三が
大広間から使いの武士が控えの間に呼びに来た。
大広間の板敷きで父と共に平伏して待っていると、部屋の後ろから
利三は、やや視線を上げて見た。向かって右の重臣たちの顔は、一番手前の者と次の者は見えたが、利三は一度も会ったことがない顔だった。一番奥の者は、前2人の顔に邪魔されて見えない。同じように向かって左の重臣たちの顔も見ようとした。一番奥は見えないが、一番手前が
向かって右の重臣たちは、利三がいずれも会ったことのない3人だということは、この3人が西美濃三人衆ということか。
平伏のまま少し待っていると、大広間の正面右の
龍興は、少し高くなっている上段の間に着座すると口を開いた。
「
大広間に
「殿、美濃守護代にして
向かって一番左の奥に座っている重臣が言った。
「大儀である。
利三は、龍興の
父も利三も、平伏の姿勢から
父が緊張しているような口調で話し始めた。
「この度は、せがれ・利三の蟄居をお解きくださり、
父が言い終えたのだから、次は自分の番だ。
「それがし、斎藤利三、西美濃三人衆筆頭であらせられる稲葉殿のご息女との縁組をお取りはからいくださった殿のご期待に
われながら心にもないことを言っている。早くこの時間が過ぎてほしいと思った。
「うむ。お主の忠義、期待しておるぞ。お主は、わが父・義龍によって遠ざけられておった身ゆえ、わしが頼りにしておる良通の娘との縁組には、わしは、初め反対だった。だが、良通がどうしてもと、きかぬゆえな。お主が、わが父によく
やはり、龍興は呂律の回らない口調で早口に喋った。
「ありがたき幸せに存じます。稲葉殿にも感謝の言葉もありません。」
利三は、深く頭を下げた。
龍興は、せわしなく
「
とはじめに父・利賢と利三を龍興に紹介した重臣の方に言った。飛騨とは、
「はっ。もう結構でございます。早くお戻りになり、お相手の続きを。首をなごうして待っておるでございましょう。」
飛騨守は、
「そうする。良通よ。あとで、利賢と利三と婚礼の日取りなど話しておくがよい。そのあと、わしに知らせてくれればよい。」
と言いながら、龍興は、もう立ちかけていた。
「はっ。」
良通と呼ばれた重臣。利三から見て向かって右の列の一番奥に座っている、今まで顔が見えなかった重臣だ。稲葉良通、その人だ。良通が、利三たちの方を向いて口を開いた。
「あとで、我が控えの間に来られよ。利賢殿。利三殿。」
(・・・あっ!)
と一瞬、
利三は、龍興が「大儀。」と言ってふらふらと杉戸から出て行くのも、この場にいる皆が一斉に頭を下げているのも目に入っていないかのように
父が
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