湖水の夢 ー斎藤利三伝ー
青木
第1章 盟友の編
第1話 雷鳴
雷鳴が近づいてくる。そのとどろきは徐々に大きくなっている気がする。今は、この
思い返してみれば、
「
利三は、声として発したか発しなかったか自分でも分からないほどの声で言っていた。自然にのどから絞り出ていた。その声は、落胆と失望、そして前途への諦めに似た想いが内包していた。先代の美濃国主・斎藤道三を討ち、新たに国主となった斎藤義龍が、刺客を自分に送ってきたのは明らかだった。義龍は、自分の主君なのだ。だが、意に沿わない者は、たとえ家臣であっても、この美濃から消してしまいたいのだ。
利三が義龍の勘気をこうむって
その一方で、やはり、一個の武士としてあるべき姿を追い求めたい、戦場を
しかし、この3年いっこうに主君からの呼び戻しはなかった。「そのまま朽ちよ。」とでも言っているかのように何の音沙汰もなかった。利三の鬱屈は日増しに強くなっていたのだった。
その上、今晩のこの仕打ちである。義龍は、利三を消しにかかってきた。
利三は、枕元の無銘の
今夜、最も大きく鳴り響いた雷鳴と共に刺客たちが雨戸を蹴倒し、躍り込んできた。
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