第2話 争闘
先頭で乱入してきた刺客の
利三が
先頭の刺客が闇の中へ倒れ込んだため、残りの4人は警戒したのか濡れ縁には登っては来ない。深夜それも室内での乱闘を考えたのであろう、手燭を持っている者が1人。手燭の灯火が陽炎のごとく揺れている。この男の
刺客の
「
「殿・・・。お
利三は、義龍が刺客を送ってきたことを直覚したとき、義龍を見限ることを決めていた。
(おれには、仕えるべき
「黙れ!」
「不忠の
刺客の頭分は押し黙ったままだが、頭分の両端に控える若い刺客たちは激昂し、利三に向かって叫んだ。1人は上段に構え、もう1人は下段に構えている。手燭を持っている一番の年若はまだ震えている。
次の瞬間、頭分の両端にいたその2人の刺客が同時に斬りかかってきた。利三は、上段の男が振りおろした太刀を
刹那、下段に構えていた男の太刀が利三の左の
だが、
「うっ!」
上段の刺客は、一言うめくと、その場に倒れ込んだ。下段の刺客の斬り上げを腰に受けたのだろう。
下段の刺客は明らかに狼狽していた。練った策戦が最初の斬撃で破られた上に、自分の仲間を斬ってしまったのだ。下段の刺客は、その狼狽した心気を整えることもせず、
心気を乱した相手は、構え、
と同時に強烈な殺気を感じた。年嵩の刺客。利三が倒した3人の刺客とはくらべものにならぬ殺気を放つ一個のその獣は、濡れ縁を踏み台にして虚空に跳び上がっていた。次の瞬間、猛り狂ったその獣は、
( ― 間に合わぬ。ここで終わるか。)
利三は、眼を閉じた。
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