概要
近代文明が崩壊した後の、遠未来の並行異世界を舞台にしています。
砂漠の民、草原の民(騎馬遊牧民)が登場します。アジア圏の諸民族の民話や神話を題材にしています。
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第一部『太陽の少女』
記憶を失った娘が、砂漠の民に拾われた。タパティと名付けられた彼女は、銀髪碧眼、鳥の名を名乗る異邦人に出会う。自分が何者かを知るために、彼らは聖地〈黒の山〉を目指す――。
第二部『足のない小鳥』
〈草原の民〉との戦いで傷ついた隼は、捕らえられてしまった。そこで彼女は、〈草原の民〉の族長・トグル・ディオ・バガトルに出会う。敗戦の責任を負わされたリー・ヴィニガ将軍と共に、鷲達は、仲間の救出を目論む。
第三部『白き蓮華の国』
〈黒の山
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!世界が、確かにそこにある。
いくつもの国を、いくつもの戦いをくぐり抜け、物語の辿り着く先を、どうか最後まで見届けてください――。
まず登場するのは鳥の名前を持つ不思議な力を持った若者たちです。その力と外見故に天人などと呼ばれたりしますが、彼ら自身はそれぞれに孤独で、心のなかに深い傷を持つ、ごくごく普通の感覚を持った若者たちです。彼らとともに、読者はこの広い世界の中に旅立ちます。
次いで描かれるのが草原の若き王トグルの苦悩です。
鷲や隼といった鳥の名を持つ若者たちも、引き続き登場します。国と国との駆け引きや戦いの中で、友情や恋愛といったありふれた感情も育まれていきます。しかしそれも、過酷な現実や、彼らの引きずる深い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生きることは、悲しみに満ちている。わかり合いたいと、儚く願っている。
科学文明の崩壊し去った遠い未来のどこかでは、
前近代のユーラシア大陸にも似た世情が現出し、
人々はそれぞれに過酷な環境の中に生を受けて、
運命に翻弄されるように、相争って生きている。
銀色に輝かんばかりの美しい姿をした〈古老〉。
特異な容姿とともに不思議な力を持った彼らは、
己が何者であるかを求めて苦悩し、旅を続ける。
鳥の名を以て自分の名とし、家も里も持たずに。
〈古老〉である鷲、隼、雉、その家族である鳩、
家族に加わる鷹や、かつて家族であった鳶と鵙、
それぞれの背負う人間ドラマから目が離せない。
緻密に描かれた心模様に毎度、胸が苦しくなる。
また一方、綿密に調べられ構築された世界観…続きを読む - ★★★ Excellent!!!過酷な嵐の中を掻い潜って飛ぶような、あなたの推しのエグい運命を見届けろ
中央アジア風の緻密で奥行きある世界観を舞台に、厳しい運命に翻弄される者たちの姿を描く、壮大な大河ファンタジーです。
第5部現在で総文字数が90万字を突破している超大作ですが、読み始めるとあっという間に物語世界へと誘われ、長さが全く気にならなくなります。むしろ、まだ続きがあるということが嬉しい。
物語のスケールに比例するように、たくさんの登場人物が出てきます。
血の通った、個性豊かで魅力的なキャラクターたち。きっとあなたにも推しが見つかるはず。
しかしご注意ください。どの人物も過たず、凄まじく重いものを背負って生きています。
過酷です。ひたすら過酷です。胸が潰れそうになります。
だがそれがい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!それぞれの心と、血と、本能と――己の内なる声が求めるものは
砂漠と草原。中央アジア風の素敵な世界に序盤から惹かれました。
作者様の他の作品と同様、地理地形から服装、食べ物といった細部までさりげなく描写されていて、安心して物語に入り込むことができます。文中で描かれる厳しく美しい自然は、読んでいて時に心が洗われる心地になります。
様々な国や民族がそれぞれの思惑と目的のために動く世界で、故郷を持たない主人公たちは、自由な思いのもと国から国へと旅を続けます。しかし、その道程は簡単にはいきません。大変厳しい世界を生き抜く人物たちが正面から描かれています。
人は様々な考えや思いに基づいて行動を起こします。自らの属する社会と、個々の思いがあり、それらが複雑…続きを読む - ★★★ Excellent!!!過酷な運命。それでも、大切な人を想い続けることを、あきらめてはいけない
長く果てしない物語の壮大さに魅了され、人間の強さに心打たれた。
かつてのアジア諸国の興亡史と、そこに息づく神話と因習に、微量のSF感を織り交ぜて紡がれた、重厚なファンタジーだ。騎馬民族を思わせる純朴だが荒々しい『古き民』の息遣いを間近に感じ、彼らと共に生き、旅をする……そんな感覚を味わいながら、彼らが選んだ生き方に涙し、深い愛情に心を揺さぶられる。
大自然に生きる過酷さと、争乱の世の残酷さを容赦なく描き出す作者さまの力量の前に、都合よく書き立てられた昨今の『異世界ファンタジー』など霞んで見える。膨大な知識を元に綿密に創り上げられた世界観が、真実味を帯びて心に迫る。そんな世界で必死に生きる…続きを読む - ★★★ Excellent!!!中央アジアテイストの雄大な世界観に浸らせてくれる
雄大な環境にも関わらず、争いが身近で落ち着かない世界で生きる主人公等。
彼らは各々の理想を求め、艱苦に耐え、苦難を越え、成長していく。
目的のためにストイックに生きるのではなく、温もりや愛情を感じ、そして与え、人としての有り様を素直に生きている。
そこに作品世界のリアリティが感じられ、登場人物に心情は寄り添っていく。
また、中央アジアという、ある種の開放感と素朴さへの憧れを感じさせる世界に生きる民族独特な感覚や情景が作品内にはちりばめられ、作品世界への視野を狭められたり広げられたりという感覚を味あわせてくれる。ここに作者さんの知識の豊富さと感覚のみずみずしさを感じ、中央アジア…続きを読む - ★★★ Excellent!!!彼らの魂は雄々しく「空」を滑空する!
長編だが、全くそれを感じさせない面白さがある。特に、「民族」好きにはたまらない一作となっている。
主に、鳥の名を冠する構成員たちの物語であるが、それぞれの部族や国などに、魅力的なキャラクターが存在する。鳥の名を冠するリーダー格の鷲や、姉御肌の隼、その隼に好意を抱く知的な雉、愛らしい鳩。彼らはマレビト的な存在だった。そんな彼らに、記憶喪失の少女・「鷹」が加わったことから、物語は動き出す。鷹の記憶を求め、山に住まう天人に出会い、行動を共にしていた彼らだったが、そこでも鷹の記憶は戻らなかった。
そして彼らは、広大な草原を舞台とする大きな戦火に巻き込まれていく。各部族の族長、国の将軍、そして新…続きを読む