彼らの魂は雄々しく「空」を滑空する! 

 長編だが、全くそれを感じさせない面白さがある。特に、「民族」好きにはたまらない一作となっている。
 主に、鳥の名を冠する構成員たちの物語であるが、それぞれの部族や国などに、魅力的なキャラクターが存在する。鳥の名を冠するリーダー格の鷲や、姉御肌の隼、その隼に好意を抱く知的な雉、愛らしい鳩。彼らはマレビト的な存在だった。そんな彼らに、記憶喪失の少女・「鷹」が加わったことから、物語は動き出す。鷹の記憶を求め、山に住まう天人に出会い、行動を共にしていた彼らだったが、そこでも鷹の記憶は戻らなかった。
 そして彼らは、広大な草原を舞台とする大きな戦火に巻き込まれていく。各部族の族長、国の将軍、そして新たなる出会い。しかしそこは戦場。陰謀と策略、裏切りや嘘が渦を巻き、複雑で重厚な人間関係が変化しながらも構築されていく。
 そんな状況の中、隼は新しく王となる青年と恋に落ちる。雉は身を引くが、青年の体を、異変が襲い……?
 さらに、鷹の記憶が戻るが、「鷹」としてこれまで皆と歩んできた記憶を全て無くしてしまう。しかも「鷹」のお腹の中には、鷲との子供が宿っていた。戦火の中でも、新たな命は生まれくる。そして「鷹」は意を決することになるのだが……。
 
 入念に、丹念に調べ尽くされた人々の伝統、言葉、信仰、衣食住。そして気候や風土、自然環境や地理。料理シーンや馬の描写も見どころ。
 恋愛の部分は胸を締め付けられ、戦の部分では胸が躍る。

 ――神はいないのかもしれない。
 ――しかし戦場は、人を神にも英雄にも変えてしまう。

 今後の展開に期待大!
 是非、是非、御一読下さい!

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