世界が、確かにそこにある。

いくつもの国を、いくつもの戦いをくぐり抜け、物語の辿り着く先を、どうか最後まで見届けてください――。


まず登場するのは鳥の名前を持つ不思議な力を持った若者たちです。その力と外見故に天人などと呼ばれたりしますが、彼ら自身はそれぞれに孤独で、心のなかに深い傷を持つ、ごくごく普通の感覚を持った若者たちです。彼らとともに、読者はこの広い世界の中に旅立ちます。

次いで描かれるのが草原の若き王トグルの苦悩です。
鷲や隼といった鳥の名を持つ若者たちも、引き続き登場します。国と国との駆け引きや戦いの中で、友情や恋愛といったありふれた感情も育まれていきます。しかしそれも、過酷な現実や、彼らの引きずる深い傷と無関係ではありません。

そして最後に語られるのがネガヤーなどと呼ばれ蔑まれてきた奴隷たちの反乱とその顛末です。
奴隷であった彼らが反乱を起こし、盗賊となっていく。自由を夢見て、自分たちでまた自分たちを縛っていってしまう。
盗賊を率いる少年デオは、針を逆立て、怒り狂うハリネズミのようです。彼の中にはどす黒く燃える怒りがあって、その熱はやがて彼自身をも溶かしてしまう。そんな危うさがとても魅力的に、そして悲しく、描かれていました。

それと、物語の一番最初に登場するオダという少年も忘れることができません。彼は物語の流れからは外れた位置にいながら、物語を最初から最後まで見届ける、そんな役目を持っていたように思いいます。

色々語ってしまいましたが、この壮大な世界に生きる若者たちの生き様を、どうぞご覧になってみてください。言いたいことは、それだけなのです。

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