中央アジアテイストの雄大な世界観に浸らせてくれる

  雄大な環境にも関わらず、争いが身近で落ち着かない世界で生きる主人公等。
 彼らは各々の理想を求め、艱苦に耐え、苦難を越え、成長していく。
 目的のためにストイックに生きるのではなく、温もりや愛情を感じ、そして与え、人としての有り様を素直に生きている。

 そこに作品世界のリアリティが感じられ、登場人物に心情は寄り添っていく。

 また、中央アジアという、ある種の開放感と素朴さへの憧れを感じさせる世界に生きる民族独特な感覚や情景が作品内にはちりばめられ、作品世界への視野を狭められたり広げられたりという感覚を味あわせてくれる。ここに作者さんの知識の豊富さと感覚のみずみずしさを感じ、中央アジアに凡庸な知識しかもたない私は振り回され、その感覚を楽しませていただいている。

 旅行記ではないのに、旅の途中で見かけた人達をずっと追いかけているような気分。
 そんな感じを味あわせてくれる作品です。 

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