過酷な運命。それでも、大切な人を想い続けることを、あきらめてはいけない

長く果てしない物語の壮大さに魅了され、人間の強さに心打たれた。

かつてのアジア諸国の興亡史と、そこに息づく神話と因習に、微量のSF感を織り交ぜて紡がれた、重厚なファンタジーだ。騎馬民族を思わせる純朴だが荒々しい『古き民』の息遣いを間近に感じ、彼らと共に生き、旅をする……そんな感覚を味わいながら、彼らが選んだ生き方に涙し、深い愛情に心を揺さぶられる。

大自然に生きる過酷さと、争乱の世の残酷さを容赦なく描き出す作者さまの力量の前に、都合よく書き立てられた昨今の『異世界ファンタジー』など霞んで見える。膨大な知識を元に綿密に創り上げられた世界観が、真実味を帯びて心に迫る。そんな世界で必死に生きる人々の、ひたすらに誰かを想い続ける細やかな心理描写は、圧巻の一言に尽きる。

「残酷描写有り」のセルフレイティングがあるため、読むのを躊躇される方がいるかもしれないが、エピソードの冒頭に「R15の戦闘シーン」などの注意を促すコメントが付けられている。作者さまの優しい心遣いだ。その部分を読み飛ばしてでも、話を追って頂きたい。

辛く悲しい別れや理不尽な運命に苦しむ登場人物の姿が余りにも切なくて、胸を痛めることも多い。それでも、小さな希望の光が見え隠れしている。だからこそ、どんどん読み進めてしまう。

長い旅路の果ての未来に、必ずや救いがあることを信じて、これからも彼らと共に旅を続けよう。

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