孤独な少女が出会ったのは、黒い翼を持つ不思議なけもの。ヨルと名乗った黒いけものは「君を助けに来た」という。その夜から、ヨルは少女を守り続け、逆境から抜け出すための強さを与える──
私にも、「私のヨル」がいる。彼女は黒猫ではなくて、クリーム色の身体にチョコレート色の四肢としっぽの、ふっくらふわふわな猫。翼はないけれど、きらきらと輝く空色の目を持っている。柔らかな身体を撫でると、不思議と心がほっこり温かくなる。だから、彼女にそっと頬を寄せて囁きかける。
「ずっと一緒にいようね。ずっと私が守ってあげるから」
思えば、悲しい時や辛い時、いつもそばにいて、私の折れそうな心を守ってくれたのは彼女だった。
生きることは、時に試練と隣り合わせになるけれど。守るべき愛しい存在がいるからこそ、人は強くなれる。この物語を読み終えた時、「私にも、私のヨルがいる」と感じることが出来る人が、一人でも多くいて欲しい──心からそう願わずにはいられないような、静かな優しさが込められたファンタジーだ。