概要
後見人の裏切り、義足に隠された秘密、様々な困難を乗り越えながら、ユリアナは自身の勇気や矜持、自由や性愛を試されてゆく。苦難の果てに彼女が見つけたものとは。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!私たちだって「どこまでも歩いていける」。生きる勇気をもらいました。
冤罪、裏切り、自爆テローー通っていた女学院からある日突然連れ出された義足の少女には、行く先行く先で災難が絶え間なく降ってきます。生き抜くことの難しさに打ちひしがれる少女は、いつのまにか自ら命綱を掴み取り、ただ巻き込まれるばかりの運命に自分から進んで「足」を踏み入れていく。その変化は、あまりにも鮮やかで劇的でした。
読者が暮らす日常にも、無数の理不尽が降ってきます。この物語のように直接命の危険にさらされなくても、ある日突然起こった事件や事故に思い当たらない人はあんまりいないのではないでしょうか。
そんな時、私たちは「どう生き抜けばいいのか」。その答えの一片を、この物語の主人公・ユリアナは示して…続きを読む - ★★★ Excellent!!!義足は特上のバレエシューズ。
一人の少女がプリマとして舞台に立つまでの物語(比喩)。
戦争という舞踊曲を盛り上げるのは、拵えられた美しい義足。
ビゼー作曲、ギロー編曲の組曲『アルルの女・ファランドール』を聴きながら読むのが最も相応しいかと思います。他にもファランドールあるかもしれへんけど取り敢えずこれで(何万回も言えるラブユー♪ってやつが脳内再生されますけれど原曲について言及します)。
そう、主人公ユリアナの抱く姓がファランドールで、確かその単語は舞踊曲のタイトルじゃないかな、と思い出して、軽く調べて頭を抱え、そして震えました。
楽曲の来歴が、あまりにもこの作品にぴったりだったから。
重々しい短調のメロディーでズン…続きを読む - ★★★ Excellent!!!カクヨム史上に燦然と輝く傑作
すみません、どこに振り込めばいいんですか?
え?無料?
web上で??全部無料で読める??
…………お前さんは何をバカなことを言ってるんだ!!??
全世界の出版社の人々よ!!この作品を書籍化しなさい!!今すぐに!!!!
ハリー!!ハリーアップ!!!!
……と、大興奮するほどの傑作です。これは本当に無料でいいのか。いや、よくない。出版されるべきだ。
私はこんなに完成度の高いweb小説を今までに読んだことがありません。
むしろなんで無料なの??ホワッツ??
何度でも言うけどどこに振り込めば出版してもらえますか??
ジャンルとしては、SFになるのだと思います(「恋愛」カテゴリになってはいます…続きを読む - ★★★ Excellent!!!圧倒的な描写で紡がれる、バイオレンスと美しさに満ちた少女の物語
まず最初に驚かされたのが物凄い文章力。
一人称のテンポのいい文体から見せられる情景はハッとするほど綺麗で、主人公の内面も切なさを呼び込んでくる。しかもちょっとした仕草、表情、容姿からそこはかとなく感じられる美しさはエロスも含んでいて、なんというか全部が輝いて見えるのです。
本作の魅力はなんといっても主人公ユリアナのキャラクター。
大人たちの策謀の中でもがくユリアナはとても芯が強く、信頼を裏切られながらも立ち止まることはない。逆境を撥ね退けようとする逞しさが読者をぐいぐいと物語の中に引っ張り込んでくれる。
他にも一癖ありそうなキャラクター達が、それぞれの思惑を持って動いているのでハラハラする…続きを読む - ★★★ Excellent!!!こういう作品が読みたかった!
「恋愛」や「少女小説」の冠に、良い意味で裏切られました。
ハリウッド映画的なジャンルでしたら、バイオレンス・アクション・ロマンティック・アドベンチャー的な感じでしょうか?
後半になればなるほど、映画的な映像シーンが続きます。
物語はユリアナの1人称で進みます。
1人称ですが、良くある「共感しやすい主人公」とは一味も二味も違います。
最初、なぜユリアナちゃんがこんなに強い(ある意味偏屈)のか不思議に思いましたが、物語が進むにつれて、彼女の過酷な過去が明らかになっていきます。
出てくる人物ほとんどが何かが欠けている。それぞれが、それを補いたい想いから、他人に依存したり、自立しようとしたりする…続きを読む - ★★★ Excellent!!!未読の方は、今すぐ読んでくれ
どんな苦境にも負けない少女と言うと、どんな少女を想像するだろうか?
本作の主人公ユリアナは、おそらくその想像にぴったりな、それでいてとんでもなく型破りな存在になること間違いない。
以下長々と書くが、このレビューを読む暇があったら本編を読んでほしいと言い切れる作品が、本作『かくして、少女は死と踊る』である。
反逆罪の嫌疑をかけられ、帝都へと連行されるユリアナに降りかかるのは、理不尽の過ぎることばかり。美形軍人に踏みつけられ、蹴られるのはまだいい方で、大好きな後見人にもらった義足すら無くしてしまい、果てには消えない傷までつけられる。
ユリアナがすごいのは、この理不尽の雨をくらっても、決して…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「かく死」は勇気を与えてくれる
まず本作は、痛快でハッタリの効いた、優れたエンタメ性を備えた少女小説であると言って間違いありません。我々とは異なる歴史を辿った世界線、クテシフォンを首都に据えた巨大な「帝国」を舞台に、個性豊かでケレン味あふれるキャラクターたちが西へ東へ大活躍します。彼らが各々異なる行動原理と価値観を持って動き、物語を転がしてゆく様は、まさに圧巻の一言。
一方で本作のもうひとつの大きな魅力は、テンプレ的なキャラ類型には到底おさまりきらない、複雑な人物造形が随所に散りばめられている点です。記号化されていない生々しい心情のゆらぎや、思考/感情/行動の間に矛盾をはらむ複雑な人間性を、高い濃度と精度でもって味わう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!まさに少女小説というべき輝きと痛み
まだ序盤ですが、かつて読み漁っていた少女小説群を思い出す空気感が深々と突き刺さりましたので、僭越ながらレビューを書かせていただきます。
辛辣な美貌の軍人や謎めいた後見人、そして主人公を立て続けに襲う苦難の数々……かつて少女小説が好きだった方は間違いなく感じるところがあると思います。ぜひ、ご一読を。
タグの「ドアマット系主人公」とは一体なんだろうと思いましたが、読んでみてよくわかりました。思った以上に主人公がドアマットされるので、そこは少し心の準備が必要でしょうか。
しかし、数々の愛すべき少女小説で描かれてきたように、少女であるということは、形はどうあれ痛みを伴うものであるかもしれません。