職場に着いたら上司が死んでいた。
残った引き継ぎ資料には何ひとつ中身が無い。
いやよくよく調べてみれば汚職を働いていた跡だけはある。どうしろと。
軍隊ものといっても兵站、物資の手配を行う部署で、言ってしまえば、描かれるのは日常業務と、それを大過なくこなす事だけだ。
けれどそれを描く物の解像度の高さ——先任軍曹がいる軍隊の描写や、丹念に拾われる業務内容や、描かれた人物の人柄、酒場にたむろする冒険者たちといった——で読ませてしまう。
そして仕事ものであるからにはもちろん予定外の業務が飛び込んできたりもするし、軍隊にとっての“予定内の業務”とはすなわち想定外の戦闘なのだ。
元々はこの作品を読んでみてと推薦されて読み始めたんですが、読めば読むほど毎回感心の連続です。
実際に軍隊で努めたことはある僕の経験に写してみても隙がないくらい兵站の苦しみや悩みがよく書かれていたと思います。時々自分の厳しかった過去が思い出してそれは困ったんですが(笑)
リアルすぎると退屈になりやすい流れをファンタシーでちゃんと味を加えて面白かったと思います。
作者さんはこの作品が最近の主流とは離れてるとおっしゃいましたが、そういうテイストがむしろ美味しかったです。
同じく軍系通のファンタシーを目指している立場ではいろいろ大変お勉強になりました。