黒猫の団子（くろねこのだんご）

「さて、正義実行だ──」

幼いころより、「僕」は、育ての親である叔母の示す「愛」の信念と、彼女が信じる〈Ａ〉という宗教に対して疑惑の心を打ち消せなかった。だが一方で、僕自身が確たる信念や価値観を持たず、情熱のない生き方をしていることも憎んでいた。そんな中で僕は、自分の信念のままに「正義実行」と称して自分勝手な行動を繰り返す相沢という男に出会う。相沢の正義の信念を独りよがりなものとして軽蔑しながらも、僕はなぜか相沢から離れられなかった。信仰も信念も持つことができない生温い「僕」は、破天荒な行動を持ちながらも確たる信念をもつ「相沢」と行動をともにするようになる。
そして彼は言った。「あの意固地な老人の黒猫を……」

一部に残酷な描写あり。不快に思われる方もおられるかもしれませんがご容赦ください。