宝石だけがジュエリーじゃない!地道で真面目な貴金属細工職人お仕事小説!
じいちゃんに勧められ、春休みにジュエリーメーカーでアルバイトをする事になった僕、西原 浩之は、実はジュエリーメーカー大手『SAIHARA』の跡取り。
創業者の孫、社長の息子として気を遣われる事なくジュエリー製作の現場を知ってほしいと考えたじいちゃんは、僕の事を誰も知らない現場で働く事ができるよう手配してくれていた。
『株式会社 匠美鎖』というSAIHARAを小規模にしたようなその会社は、色々な問題を抱えつつも現場の雰囲気は悪くなかった。
貴金属細工職人(ゴールドスミス)として小さな1歩を踏み出した僕だったけど、ただひたすらに繰り返す細かな作業の大変さを目の当たりにしてへこたれたり、聞いた事もない専門用語や目にする技術・機械・工具にわくわくしたり、周りと比べて自分の技術の低さにへこんだり、仲良くなった職場の人たちに励まされたり。
初めて知る現場の現実に一喜一憂しながらも充実した春休みを送っていた矢先、突然、匠美鎖倒産の危機の噂が流れる。
何か僕にできる事はないだろうか。いや、短期バイトの身でできる事は今目の前にある作業をこなす事だけだ。
そんな風に心を痛めている時、偽名で匠美鎖に勤めている事が父にバレ、けじめとして僕名義の株の処分を言い渡される。
それは、SAIHARAの跡取りとは認めない事を意味していた―――。