第3話 多勢に無勢! 絶体絶命の魔女!
「虫けらども! 我が至高の闇に飲み込まれて滅び去れ!」
ミランダの朗々たる声が辺りに響き渡ると、戦闘が繰り広げられている広場は異様な緊迫感で満たされていく。
戦いが進み、ついにミランダの最も得意とする死の魔法
ミランダが伝家の宝刀を連発し始めるとプレイヤー達の間からどよめきが上がり、そんな彼らを黒い
運に恵まれない人から死神の手に捕らえられ、次々と命を落としていった。
戦局はミランダのペースとなった。
でも、それは裏を返せばミランダのダメージがライフゲージの半分に達したということだ。
1対1の戦いならいざ知らず、これだけ多数の相手を前にしている現状ではミランダの危機であるという事実は
今だって
ミランダは怒りのまま
だけどダメージは確実にミランダの体を
そんなミランダを見ていられなくて、僕は黒い鎖から逃れようと必死にもがいた。
無駄だと知りながら、そうせずにはいられなかった。
僕はもう見たくないんだ。
ミランダが倒されるところなんて二度と見たくない。
接近してくる敵を
ミランダのライフゲージがかなり削られてきていることがプレイヤー達を勇気付けたみたいで、彼らは玉砕覚悟でミランダに向かっていく。
向かっていくうちの3人に1人が
やばい……やばいぞ。
自分を斬りつけたプレイヤーを憤怒の表情で打ち倒すミランダだけど、その体はすでに傷だらけだった。
僕は腕や足がちぎれるんじゃないかと思うほど力の限り、鎖の拘束から抜け出そうとした。
その
いや、違う。
ミランダが弱ってきているんだ。
彼女の魔力の低下がこの鎖の拘束力を弱めている。
その事実がより一層、僕の
くそっ!
動け動け動け!
プレイヤーの数もかなり減って残り50~60人ほどになっている。
ミランダはよっぽど頑張ったんだ。
だけどさっきまで猛威をふるっていた
もう魔力量が限界に近いんだろう。
あれだけ魔法を連発していればそうなるはずだ。
クソッ!
ミランダがたった一人であんなに危険な状態でいるのに、誰かの助けが必要な時なのに、どうして僕は何も出来ないんだ!
そう思った矢先のことだった。
「あ、あれっ?」
ほんのわずかに僕の身が軽くなった。
僕の腰に下げていた呪いの剣がふいに重さを失ったように思えたんだ。
思わず自分の腰に目をやり、僕は驚きに息を飲んだ。
刀身の周りに施された白と黒の一対の
二匹の
ガチャンという金属音が聞こえたかと思うと、ふいに手足が軽くなった。
僕を拘束していた黒い鎖が、白と黒の
急に体の自由を得た僕は思わずバランスを崩しそうになり、
「な、何で? どうして?」
不可解な現象に驚きつつも、その疑問は自分が置かれている状況によって吹き飛んだ。
僕は下を見て背筋が凍るのを感じた。
目も
いくら僕がライフゲージのないキャラだからって、こんな高いところから落ちたらどれだけ痛いか、そして落下がいかに怖いか、それを想像するだけで震え上がってしまう。
「ミ、ミランダを助けなきゃ。彼女の
僕は震える
だけど、足がすくんでたった一歩が踏み出せない。
僕は頭の中で何度も何度も繰り返し願った。
この情けないヘタレの背中を誰かがひと思いに押してくれればいいのに、と。
きっとジェネットがいてくれたら優しく微笑んでそっと僕の背中を押してくれただろう。
僕の脳裏にジェネットの姿や声が、そしてその言動の数々が鮮明に
そして、もしミランダだったらとっくに僕を蹴り落としているだろう。
煮え切らない僕の態度に
ミランダの鋭い目つきやサディスティックなその振る舞いの数々が思い起こされる。
だけどすぐにそれらは別の思い出に変わった。
楽しかったミランダとの日々。
ジェネットに敗れて倒れる寸前のミランダの笑顔。
そして僕のために一緒に行動してくれたジェネットの優しさ。
そのために倒されてしまったジェネットの清らかな
そして……そしてミランダが僕に残してくれたあの手紙に書かれた彼女の思い。
自然と胸の奥に熱いものがこみ上げ、足の震えが止まる。
そうだ。
今ここで僕の背中を押すのはミランダでもジェネットでもない。
足を踏み出すのは他ならぬ僕自身でしかないんだ!
僕は歯を食いしばって下を向いた。
高所にいるという事実を思い知らされるから本当は下なんか見たくもない。
だけど、そこにはミランダの姿がある。
僕はミランダを見ていなくちゃならないんだ。
今この時こそ、ミランダがピンチの今この瞬間こそ、絶対に彼女から目を離すわけにはいかないんだ。
だって……だって僕はNPCだから。
誰よりも一番近くでミランダを見ていたNPCだから!
僕はミランダの姿を視界に捉えたまま、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます