第3話 まさかの決着! そして僕は……
「な、何だ?」
僕は思わず大きな声を上げた。
激しい戦闘の
まるで彼女の体から生まれ出でるかのように。
「あれは……」
僕はその剣の正体に気付き、身の毛のよだつ思いで立ち尽くした。
それはジェネットのアイテムストックに収納されていたはずの呪いの剣だった。
呪いが解呪されたはずのそれは、刀身に
「ううっ……」
ジェネットは思わず
ミランダはその剣を見るとニヤリを笑った。
「へぇ。あんた前に私を倒したんだ? 生意気ね。でもその剣を後生大事に持っていたことが命取りよ」
ジェネットは悔しげに唇を
「こ、この剣は確かに浄化したはずです」
その通りだ。
ジェネットに浄化されて剣の呪いは解かれたはずだ。
だけどミランダはそれも
「でしょうね。普段はそれで問題ないんだろうけど、この私がここまで近くにいるとなると話は別よ。なぜならそれは私が作り出した剣で、私の魔力に反応するから」
僕はミランダの言葉と、苦しげに顔を
「そんな……ジェネットがミランダを倒した褒賞アイテムだったのに」
それがまさか
剣を引き抜いた今もジェネットの『
いや、あれは血じゃない。
おそらく呪いの剣から噴出した高濃度の闇の粒子だ。
そしてそれは純白の衣を侵食するように徐々に広がりを見せ、ジェネットの体を
ジェネットは必死にこれに耐え、震える足を
しかしその顔は
「ジェネット!」
僕は思わず叫び声を上げていた。
彼女の顔は苦痛に
本当に苦しそうだ。
そして事態はさらに悪化の一途を
地面に落ちていた呪いの剣が自ら動き、ジェネットの持つ
彼女の武器である
きょ、強制的に装備?
そんなことってあるのか?
驚きに息を飲む僕が見守る中、ジェネットのステータスウインドウが危険を知らせる赤色に変色した。
あれだけ高かったジェネットのステータスが
こ、これって呪いの剣の影響なのか?
「ミ、ミランダ……あなたは」
ジェネットは苦痛とは異なる困惑の表情を浮かべてミランダを見据えた。
だけどすぐにガックリと
やばい!
これを見たミランダは一気に勝負に出た。
「私は闇を
そう言うとミランダはついに死の魔法
「神の作りたもうた鏡に跳ね返せないものはありません!
苦痛に耐え忍び、ジェネットも神聖魔法の反射鏡を目の前に展開してこれを迎え撃つ。
黒い
死の魔法は術者であるミランダのもとに戻る……はずだった。
だけど……。
ピシッという音とともに反射鏡に一点のほころびが生じる。
それはジェネットにとって致命的だった。
ミランダの死の魔法
漆黒の
「あっ……」
あっという間、というのは本当だ。
僕はそれしか声を発することが出来ずにジェネットの姿を
黒い
後に残されたジェネットは立ち尽くす僕の見ている前で、ゆっくりと
そしてうつ伏せのまま地面に倒れ込むと、ほんの少しだけ顔を僕に向けた。
僕とジェネットの視線が静かに交錯する。
「ジェネットォォォォォ!」
僕は無意識のうちにそう叫びながら彼女に駆け寄った。
そして地面に横たわる彼女のすぐ側にしゃがみ込んだ。
ジェネットは僕の顔を見上げると、苦しげに
「うぅ……ふ、不覚です。私も……まだまだ未熟ですね」
僕は何も言葉を返すことが出来ずにただただ首を横に振った。
「へ、兵士様。この体に……ミランダの……細胞が……ゴホッ!」
ジェネットはそこまで言って激しく咳き込んだ。
その口もとには血が
「もういい! もう
僕は今にも泣き出してしまいそうなのを必死に
ジェネットは僕の手を静かに握り返してくれた。
その力が徐々に弱くなっていく。
「あなたに……
そしてゆっくりと目を閉じると、動かなくなった。
そ、そんな……。
ジェネットが負けた。
ミランダの前に敗れ去った。
激しい戦いによって相当のダメージを負ったミランダは疲労を色濃く顔に
「フンッ! 私の勝ちね! ザマー見なさい。神の元へ泣いて帰れっつうの!」
ミランダはそう言うと勝ち誇った顔で僕を見た。
僕の胸の内に激しい怒りが湧き起こる。
「ミランダ……君って奴は」
「何よ。文句あるのかしら?」
そう言うとミランダは僕を
相変わらずその刺すような視線が恐ろしかったけど、僕の頭の中にふいに浮かび上がった光景が恐怖を一瞬にしてかき消した。
今しがた倒れたジェネットの最後の表情と僕に向ける視線が脳裏に
頭の中に急激に混乱の
それはまるで押し寄せる波のようで、僕の感情をかき回し、思考を奪い去る。
「う、ううぅっ!」
僕は思わず頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
な、何だ?
頭の中に何かが戻ってくる。
胸の中で何かが溶けていく。
僕は……僕は一体……?
様々な映像が次々と脳裏に浮かび、数々の思いを伴って積み重なっていく。
頭の中でいくつもの閃光が
それは……それは忘れていたはずの僕自身の記憶だった。
それがあるべき形を取り戻した。
「……ミ、ミランダ」
僕はミランダの名前を呼んだ。
先ほどまでとは違う思いを込めて。
目の前にいるミランダは僕にとって数分前の彼女とは大きく異なっていた。
ミランダと僕はただのボスキャラとNPCという関係から、ほんの少しだけ距離を縮められたはずだった。
僕と他愛も無い話に興じていたミランダ。
一人で洞窟の外に出るのが本当は怖いのに素直にそう言えなかったミランダ。
敗れ去った後の最後の瞬間、死の
僕は……全てを思い出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます