第11話 白亜の神殿にて
僕らのいた場所から神殿までは小走りで5分程度の距離だった。
すでに神殿の中に入っている僧侶のドレイクを追って僕が神殿に入ると、相変わらずそこは
それでも神殿の中は外から差し込む光が満ちていて明るかった。
入口から続く廊下を歩いて突き当たりに位置する
そこから
誰もいない
「ドレイクさん。忘れ物ですよ」
そう言って僕は彼が忘れていった
彼は僕の手の中にある
それでようやく
もちろん礼の言葉なんて口にしないどころか、僕を
ま、NPC相手にプレイヤーがよく見せる反応だから別にいいけど、この人とはうまくコミュニケーション取れそうにないなぁ。
「それじゃあ僕はこれで……」
僕はそう言うとドレイクに背を向けようとした。
その時だった。
「うわっ!」
突然、神殿が大きな揺れに襲われて僕は思わず声を上げた。
凄まじい揺れと体全体を震わせるような
何なんだ?
僕は自分自身の頭に浮かんだ疑問に即座に答えを得た。
揺れは一瞬のことだったけど、その一瞬で神殿内の空気がガラリと変わってしまったからだ。
「そ、そんな……どうして」
遠くにあったはずの闇の気配がすぐ近くに満ちている。
清らかだった神殿の中に漆黒の
それもそのはずだ。
僕は息を飲んでその場に立ちすくみ、
なぜなら
突然現れたその少女の姿に、僕は息を詰まらせて
「ミ、ミランダ……」
そう。
そこに立っていたのは闇の魔女・ミランダその人だった。
「我が名はミランダ。闇を司る
僕は見慣れたミランダの顔を見て、頭の中が真っ白になってしまった。
な、何で?
ミランダの気配は今の今まで離れた場所にあったはずだ。
ここから王城よりもさらに遠くにあったはずで、僕らは歩いて王城に向かっても十分に間に合うはずだったし、ミランダを迎え撃つための準備をする時間さえあったはずだ。
それなのにどうして……どうして今ここにミランダの姿があるんだ?
自分の理解の
「か、神の
ドレイクは裏返った声でミランダを怒鳴りつけると、すぐさま神聖魔法の詠唱を始める。
だけどその胸を一瞬にして黒い鎖が貫いた。
「
ドレイクの胸を貫いていたのは、ミランダの振るった
は、速いっ。
ドレイクが避ける間さえ与えてもらえなかった。
「か……かはっ」
ドレイクはそれ以上、声を出すことも出来ずに倒れて動かなくなった。
ライフゲージが0を差している。
そ、そんな……。
信じられないことにドレイクはすでに息絶えていた。
ミランダの強さは圧倒的だった。
ドレイクだって精鋭たる
僧侶ゆえに体力は決して多くなかったけれど、それでもたった一撃で殺されてしまうような
それに僕が知るミランダは魔女というくらいだから魔法攻撃は最強クラスだったけれど、
ミランダの異変が彼女のステータス値にまで異常をきたし始めているとしか思えない。
「ミランダ……どうしてここへ?」
僕はやっとのことで声を絞り出したけど、それはカラカラに乾いて
だけどミランダはそれを聞き取ると、冷たい視線を僕に向ける。
「どうしてここへ……ですって? それは私のセリフなんだけど、せっかくだから私の方から答えてあげようかしら」
そう言うとミランダは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます