自分ドロップ

作者 千葉まりお

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★★★ Excellent!!!

性格を薬の力で変えられる、って言われたら、どうする?
他人とまともに喋ることもできないお前は、とある薬の治験を受けることになった。

「お前」という二人称で綴られる、珍しい小説。
その意味がわかった瞬間、世界がグルリと反転します。

暴力描写・残酷描写があります。
この著者の描写は本当に心を抉ってくるので、苦手な方は読まないほうがいいです。
物理的に痛い描写もですが。
知らなければ無かったことにしておける、気付きたくなかった、「逃げ」を直視させられる心理的負荷が凄いです。
精神的に凹んでいるときは避けたほうがいい。

それでも。
読み始めた方は、ぜひ最後まで読んでほしい。

まともってのは、何だ?

★★★ Excellent!!!

 読み始めたら止まらず、一気に最後まで読んでしまいました。
 吐き気がするほど面白い!

 現代に生きづらさを感じている人、死んでしまえたら楽なのにと思っている人。
 そういう人にオススメの作品です。

 この作品を読めば、自分を苦しめている『価値観の呪縛』を解くヒントが、きっと得られるはずです。

 ただし、この作品は刺激が強すぎるため、心にある程度の余裕があるときに読むようにして下さい。
 自己嫌悪で死にそうなときに読んでしまうと、さらにしんどくなる恐れがあります。

 最後に。この作品を書き上げた作者は天才だと思います。感情を言語化する能力が素晴らしい!

★★★ Excellent!!!

読んでいる間、震えと悪寒が止まらなかった。
自分がずっと感じていて、それでいて気付こうとしていなかった、いや目を逸らしていたものを語彙と表現に富んだ鋭い文章で突き刺され続けた。
「辛かった」のは事実だが、それでも読むのを止められなかった、止めるわけにはいかなかった。一度読み始めたら最期、結末を読むまで心からは血が流れ続ける。
だが、最後まで読み終えた時、読んでいる間の苦痛の意味に気付く事が出来た。耐えることが尊いとか、根性が大事とかそういう話ではなく、辛いと感じることについてだ。

一度読み始めたら読了まで時間はかからないと思うけど、念のため時間や気持ちに余裕のある時に読むことをお勧めします。

★★★ Excellent!!!

皆思ってるけど言葉にしない、言葉に出来ないことを表す。
もしくは皆思いもしなかった事を言葉に表すことが物語の発明であるとどこかで聞いた。

これは前者であると思う。
合理や論理を嗜好する情報化社会の到来と、動物的な人間の性質を嫌ったことによる誤った理性の捉え方が引き起こした現代病。

一話目の衝撃と感動を超えるものではなかったけれど、後半に囁かれる希望についての言葉は作者の旅に付き合いたいと思った私にとって、充分な歯ごたえがあった。

これからも良い物語を紡がれるよう 祈り ます(笑)

★★★ Excellent!!!

お前。
なあ、お前だよ、お前。
お前は自分の心ってものは石みたいに固くて形の変わらないものだって思ってないか?(意思だけにな、ハハハ)
違う。
違うんだよ。
心は水みたいなものだ。
なにかが落ちれば波が立つし、溝を掘ってやればそのとおりに流れるし、四角い壜で汲み上げればその形になる。
そんな程度のものなんだよ。
わからない?
まあいいさ。
俺の声が聞こえるってことは、お前はもうお前だけじゃいられないんだからな。

★★★ Excellent!!!

なんかもう、すごい。すごいとしか言えない。

嘲笑われる自分が恥ずかしくて、普通の人がうらやましくて、「まともになる」薬の治験に参加した34才おじさんのたどる道のり。
まともとは何か、自分とは何か、「生きていてもいい価値」とは何か。様々突きつけられる現実。問いかけ。

自分と自分でないものが混ざり合い、入れ替わる不気味さ。作り替えられていく自分への恐怖。

そして、それは、誰にでも平等にやってくる。

無垢であるが故の残酷、無知。そして無垢であるが故の弱さ。
読んでいてすごくえぐられるし苦しいけど、やめられないのは、物語が痛みだけではないから。
みじめな事であろうとも、積み重ねていく上で得ていく強さ。

痛みの向こうから、「価値なんて誰に肯定される必要もない」と、叫び続けてくる物語でした。

★★★ Excellent!!!

 私の師匠のわかつきひかる先生はおっしゃいました。
 二人称小説は一般的でないからやめておけと。

 でも思いっきり突っ走ります。

 精神病質の人が、精神病を感知する薬を飲みます。

 すると、突然まともな人が生まれるんです。

 心療内科のお医者さんが言う、健康にいいこと、自己肯定をはぐくむことをやり始めます。仕事もみつかり、自分の欠点は現れず、生活習慣は改善、心身ともに健康。

 さあ、憧れの彼女もできました。いよいよ人生が開けます。みんな変わった後の彼が大好きです。

 でも、それって、変わる前の彼と同じ人なんでしょうか。

 テーマ的には、コンビニ人間と共通するものがあるのかも知れませんね。

 心の闇、存分にえぐってみてください。あらゆる古典が肯定する人間的な幸せにノーを突き付け、存分に相対化して全てを壊してみてください。何かが生まれるか、それとも――。

 やっぱりこういう小説を、『文学』と呼ぶのでしょうかね。

★★★ Excellent!!!

たぶん心に闇を持っている人は読まない方がいいかもしれません
闇の中にある傷口を引っ掻き回されて死にたくなりそうになるから

この作品の言葉全体が、ある種の心の闇を抱えている人には「虐殺の文法」みたいに染み込んでいってしまう

私は……耐えきったと思うけれど、読む前の私と今の私は同じ人間と言ってもいいのだろうか?

猛毒、注意です
お読みになる方の健闘を祈ります

★★★ Excellent!!!

 いつかこの作品がバーンと評価された時に「俺はあの作品があまり知られていなかったころから目をつけていたんだぜ」とドヤるために今のうちからここに記しておきます。
 作中でも言及されているように、チャック・ポーラニック(わざわざポーラニックと表記するあたりにわたしのめんどくささを感じてください)の影響が強く見受けられる独特のタフな文体で、設定的にも底本としてファイトクラブがあるのはたぶん間違いないとは思います。
 しかしある種のカルチャーに親しんだある種の世代においてはチャック・ポーラニックは影響を受けないのが不可能なほど強烈な存在感を放っているので、「チャック・ポーラニックの影響を受けているよね?」というのはほとんど「あなた人間ですね?」と言っているのと変わりませんから、あまり意味のない指摘でしょう。
 そもそも真似しようと思ったところでそう易々と真似できるものではないからこそチャック・ポーラニックは今日でも燦然と輝くジェネレーションXのマイルストーンたり得ているわけで、そこにきて本作は、ただ表面上の(今のところ観測できている)設定がファイトクラブを彷彿させるだけでなく、もっと芯の部分でしっかりとポーラニックしています。
 〇〇っぽいというのが作家にとって一般的に褒め言葉とはならないことは重々承知していますが、レビューという性質上、どんな読者を想定して連れてきたいかというとチャック・ポーラニック好き好きマンなので、こういった表現にならざるを得ないところがあってご了承頂きたいというか。
 ポーラニックにハマッた経験のある人は是非「ほほう、チャック・ポーラニックっぽいとな? どれどれナンボのもんじゃい」と心理的ハードルを上げて読んでみてください。レビュー時点ではまだ未完ではありますが、この時点ですでに本作はそんなあなたをも興奮させるだけの十分なポテンシャルを持っています。