自分の価値を、誰が決めるのか

なんかもう、すごい。すごいとしか言えない。

嘲笑われる自分が恥ずかしくて、普通の人がうらやましくて、「まともになる」薬の治験に参加した34才おじさんのたどる道のり。
まともとは何か、自分とは何か、「生きていてもいい価値」とは何か。様々突きつけられる現実。問いかけ。

自分と自分でないものが混ざり合い、入れ替わる不気味さ。作り替えられていく自分への恐怖。

そして、それは、誰にでも平等にやってくる。

無垢であるが故の残酷、無知。そして無垢であるが故の弱さ。
読んでいてすごくえぐられるし苦しいけど、やめられないのは、物語が痛みだけではないから。
みじめな事であろうとも、積み重ねていく上で得ていく強さ。

痛みの向こうから、「価値なんて誰に肯定される必要もない」と、叫び続けてくる物語でした。

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