まともって何?

 私の師匠のわかつきひかる先生はおっしゃいました。
 二人称小説は一般的でないからやめておけと。

 でも思いっきり突っ走ります。

 精神病質の人が、精神病を感知する薬を飲みます。

 すると、突然まともな人が生まれるんです。

 心療内科のお医者さんが言う、健康にいいこと、自己肯定をはぐくむことをやり始めます。仕事もみつかり、自分の欠点は現れず、生活習慣は改善、心身ともに健康。

 さあ、憧れの彼女もできました。いよいよ人生が開けます。みんな変わった後の彼が大好きです。

 でも、それって、変わる前の彼と同じ人なんでしょうか。

 テーマ的には、コンビニ人間と共通するものがあるのかも知れませんね。

 心の闇、存分にえぐってみてください。あらゆる古典が肯定する人間的な幸せにノーを突き付け、存分に相対化して全てを壊してみてください。何かが生まれるか、それとも――。

 やっぱりこういう小説を、『文学』と呼ぶのでしょうかね。

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