ファイトクラブに脳天やられたマンはきっと本作も楽しめる

 いつかこの作品がバーンと評価された時に「俺はあの作品があまり知られていなかったころから目をつけていたんだぜ」とドヤるために今のうちからここに記しておきます。
 作中でも言及されているように、チャック・ポーラニック(わざわざポーラニックと表記するあたりにわたしのめんどくささを感じてください)の影響が強く見受けられる独特のタフな文体で、設定的にも底本としてファイトクラブがあるのはたぶん間違いないとは思います。
 しかしある種のカルチャーに親しんだある種の世代においてはチャック・ポーラニックは影響を受けないのが不可能なほど強烈な存在感を放っているので、「チャック・ポーラニックの影響を受けているよね?」というのはほとんど「あなた人間ですね?」と言っているのと変わりませんから、あまり意味のない指摘でしょう。
 そもそも真似しようと思ったところでそう易々と真似できるものではないからこそチャック・ポーラニックは今日でも燦然と輝くジェネレーションXのマイルストーンたり得ているわけで、そこにきて本作は、ただ表面上の(今のところ観測できている)設定がファイトクラブを彷彿させるだけでなく、もっと芯の部分でしっかりとポーラニックしています。
 〇〇っぽいというのが作家にとって一般的に褒め言葉とはならないことは重々承知していますが、レビューという性質上、どんな読者を想定して連れてきたいかというとチャック・ポーラニック好き好きマンなので、こういった表現にならざるを得ないところがあってご了承頂きたいというか。
 ポーラニックにハマッた経験のある人は是非「ほほう、チャック・ポーラニックっぽいとな? どれどれナンボのもんじゃい」と心理的ハードルを上げて読んでみてください。レビュー時点ではまだ未完ではありますが、この時点ですでに本作はそんなあなたをも興奮させるだけの十分なポテンシャルを持っています。

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