こんな兄は、嫌だ。...だったはずなのに。

@p-san

第1話

私の母は、5歳の時にガンで亡くなった。

それからは父が、ずっと世話してくれた。刑事だから不規則な日々を送り、小学生に上がってからは、家に帰らない日もあったが、その日は必ず父からの電話が来た。休みの日は、疲れてる素振りを一切見せず、必ず私と遊んでくれた。



私が小3の頃に父と公園に遊びに行った時。父がアイスクリームを買いに行って、1人公園に残っていた私に、知らない男が声をかけてきた。

「お嬢ちゃん、1人?おじさんと遊ぶ?」

私は首を横に振って否定したが、

「おじさん、美味しいお菓子いっぱい持ってるよ。楽しいおもちゃも持ってるし。だから、おいでよ」

そう言って男に強引に腕を引っ張られ、さすがに怖くなって大泣きした。その時。

「ウチの娘に何してんだ」

刑事の顔になった父が素早く私の前に立ち、男の腹を殴った。腹に痛みが走り、男はその場にうずくまり、男の手が私の腕から離れる。

「今なら逃がしてやる。だが、娘に2度と近づくな。次は只じゃおかねぇからな」

父に怖じ気づき、男は逃げていった。

父は私の方を向いて、私に目線を合わせる。

「もう大丈夫だ。ごめんな、1人にして。ほら、アイス買ってきたぞ~」

私の頭を撫でてくれる優しい手に、父の飛びっきりの笑顔に恐怖心は一瞬で消えた。

「うん!」


それ以来、私は、父のように強くて、優しい人になりたくて、空手を覚え、守りたい人を守れるように努力した。

...ただ、女子らしい事は何1つ出来ない。

特に家事は、父譲りでダメダメだ。 料理も出来ない、裁縫も出来ない、掃除も出来ない。かろうじて、洗濯とアイロン掛けは何とかこなしてるが。

そんな私と父がどうやって生活してきたか。


それは、木部佳代子さんという、女性がいたからこそ、成り立っていたのだ。


佳代子さんは、父の幼なじみだ。だから、当然 父が家事が出来ないのを知っていたので、母が亡くなってから、気にかけて定期的に家に家事をしに来てくれた。父が仕事で私が1人になるときは、泊まりに来てくれたりして。そのため私にとって佳代子さんは、母親のような存在だった。



が、ある日。


「芽依。実はな、父さんと佳代子、再婚することにしたんだ」



高校2年になった私は、父の言葉に衝撃を受けた。

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