第11話

その日の昼休み。

千春と中庭でお弁当を食べようと移動していた。その時。

中庭から声が聞こえてきた。

「使えねーな。買ってこいって言っただろうが!」

千春と顔を見合せ、恐る恐る中庭を覗くと、男女6人が1人を囲んでいた。囲まれている1人は...兄だった。

「...た、体育...だったから......頑張ったけど......間に合わなかった...」

「ウチら、楽しみにしてたのになー。限定30個のミックスチョコパン。...マジでどうしてくれんの?」

兄が囲まれていたのは、3年でも特に恐いと噂の6人組だった。男4人がボクシング部と言うことで、怒りを買ったら、確実にボコボコにされるとの話だ。中には半殺しにされかけた人もいる...とか。

「うわー...何かヤバくない?木部死んじゃうんじゃない?」

千春が私の後ろに隠れて、あたふたする。

兄を助ける?いや、今まで何度も見て見ぬふりをしてきたのだ。なのに急に助けたりしたら、変に思われる。...正直、木部和志が兄だという事を周りに知られたくない。


「...場所変えよう。私達まで巻き込まれそう」

千春が危険な目に遭わないようにするため。そう自分に言い聞かせ、私は千春の手を引き、中庭を後にした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る