第12話
その日、家に帰ると、顔にガーゼや絆創膏をふんだんに貼られた兄がいた。一瞬、兄と目が合ったが、すぐに反らされ、兄はそのまま2階に上がっていった。
「芽依、ちょっといい?」
リビングから佳代子さんに呼ばれ、私はリビングに行った。
「和志、学校で何かあった?」
ソファーに座るなり、佳代子さんはいきなり核心をついてきた。母親である佳代子さんにどう説明すればいいのか、言葉に悩んでいると、佳代子さんが続けた。
「和志って...友達いないでしょ?」
「えっ...」
目を見開いて驚くと、佳代子さんは可笑しそうに笑った。
「和志のあの人見知りの激しさを見れば、分かるわよ。..."友達と遊ぶ"って言葉ももう何年も聞いてないしね」
佳代子さんは突然立ちあがり、何故かテーブルの上に置かれていたアルバムを手にして戻ってきた。
「さっきまでちょっと見てたのよ。和志のアルバム」
そうして見せてくれたのは
カメラ目線で満面の笑顔を見せる小さな男の子の姿だった。友達と一緒に写っている写真もあった。
「これが...?」
「うん、和志なのよ。昔はね、明るくて、よく笑う子だったの」
今の兄とは全く別人のようだ。じゃあ...何故?佳代子さんは私の思っている事を見抜いたようで、すぐ教えてくれた。
「和志の父親が亡くなってからよ。あの子が変わってしまったのは」
そう話す佳代子さんは、今まで見たことがないくらい弱々しくなった。
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