第4話
昔から通ってる家の為、佳代子さんは迷うことなく、父の寝室に荷物を置いた。
「和志の部屋は...芽依ちゃんの部屋の隣が空いてるって、俊介が言ってたわ」
俊介とは言うまでもなく、父の名前。
「芽依ちゃん、和志に部屋を案内してあげてね」
「う、うん」
「あ、そうそう。あと少しで引っ越しの業者も来ると思うから。ちょっと家の中騒がしくなるわよ。落ち着いたら、お昼ご飯食べましょうね」
佳代子さんはそう言い残して、荷物を整理しに父の寝室に向かった。
「じゃあ...部屋に案内します、ね」
いくら知ってると言っても、話したことがあるわけでもなく、殆んど初対面に近いような間柄だ。木部和志ほどではなくても、人見知りをする私には、今のこの状態は、大きな試練だった。喋りは得意ではない、だからといって相手は、自分以上に喋りに期待が持てないため、自分が頑張って喋らないといけない。
だが、木部和志は、何も返事せずにただ、私の後ろをついてくる。
「佳代子さん...お母さんには、昔からお世話になってますけど、まさか息子が木部先輩とは知りませんでしたよ。びっくりしました」
「...」
やはり木部和志からの返事はなく、会話が続かない。私は"若干"イラッとし、
「あの!」
後ろを振り向き、木部和志と向き合う。木部和志はビクッと肩が上がり、目を丸くした。
「何か言ったらどうですか?私達、家族になるんですよ。兄妹になるんです。"よろしく"的な言葉、あるでしょう?」
木部和志...兄は、目を泳がせ、かけていた眼鏡をあげる仕草をする。そして、
「.........は...」
耳を澄ませないと聞こえないようなか細い声が漏れる。
「何て?」
「君は...僕を兄と慕えるのか...?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます