第4話

昔から通ってる家の為、佳代子さんは迷うことなく、父の寝室に荷物を置いた。

「和志の部屋は...芽依ちゃんの部屋の隣が空いてるって、俊介が言ってたわ」

俊介とは言うまでもなく、父の名前。

「芽依ちゃん、和志に部屋を案内してあげてね」

「う、うん」

「あ、そうそう。あと少しで引っ越しの業者も来ると思うから。ちょっと家の中騒がしくなるわよ。落ち着いたら、お昼ご飯食べましょうね」

佳代子さんはそう言い残して、荷物を整理しに父の寝室に向かった。


「じゃあ...部屋に案内します、ね」

いくら知ってると言っても、話したことがあるわけでもなく、殆んど初対面に近いような間柄だ。木部和志ほどではなくても、人見知りをする私には、今のこの状態は、大きな試練だった。喋りは得意ではない、だからといって相手は、自分以上に喋りに期待が持てないため、自分が頑張って喋らないといけない。

だが、木部和志は、何も返事せずにただ、私の後ろをついてくる。

「佳代子さん...お母さんには、昔からお世話になってますけど、まさか息子が木部先輩とは知りませんでしたよ。びっくりしました」

「...」

やはり木部和志からの返事はなく、会話が続かない。私は"若干"イラッとし、

「あの!」

後ろを振り向き、木部和志と向き合う。木部和志はビクッと肩が上がり、目を丸くした。

「何か言ったらどうですか?私達、家族になるんですよ。兄妹になるんです。"よろしく"的な言葉、あるでしょう?」

木部和志...兄は、目を泳がせ、かけていた眼鏡をあげる仕草をする。そして、

「.........は...」

耳を澄ませないと聞こえないようなか細い声が漏れる。

「何て?」



「君は...僕を兄と慕えるのか...?」

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