第8話

翌日。学校があったので、制服を纏い、リビングに降りてきた。すると、同じく制服を纏う兄が朝食を済ませた所だった。

「芽依、おはよ」

挨拶してきたのは

兄ではなく、キッチンから出てきた佳代子さん。

「おはよう」

私が佳代子さんに返すと、兄は何も言わず、リビングを出ていった。

「あの子ったら...挨拶ぐらいすればいいのにね」

「......」

回転寿司での事を反省してから、父と佳代子さんの為にも、私は兄と少しずつでも仲良くならないといけないと思うようになった。


昨日の夕飯でも、佳代子さんと共に作った、外も崩れ、中も少し黒くなったオムライスを出した時。

「味はうまいよ!芽依」

そう言ってガツガツと頬張る父の横で、兄は黙々と静かに口に運んだ。

「どう?」

私が聞いてみても無言。

「和志、ちゃんと答えてあげなさい」

佳代子さんに言われると手を止め、少し考える。そして。


「..........オムライス...だと思う...」

そう答えた。

待って。どういう事?

「オムライス作ったんだから、当たり前でしょう!味は?美味しいの?不味いの?」

「.........分からない......どう表現すればいいのか......」


少しでも兄を理解しようとしても、すればするほど理解出来ず、一向に心を開いてくれそうもない。

『君は...僕を兄と慕えるのか...?』

初めて会った時にそう聞かれたが、もし同じように兄に、"私を妹として受け入れてくれるか"と聞いたら、兄も私以上に否定していたのかもしれない。

「芽依、ご飯とパンどっちがいい?」

そこで、佳代子さんの声に我に返った。

「んー...パンかな」

「分かった。はい、出来立て♪」

バターがのったホカホカの食パンを佳代子さんから受け取り、私は朝食を食べた。



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