第21話

その後、僕は2年生の校舎にやって来た。周りの生徒がざわつき、先程のように気持ち悪がられる。

「誰かのストーカーしてるんじゃないの?」

「やだー」

「誰もお前なんかに振り向かないっつーの」

分かってる。自分が気持ち悪い事をしてる事ぐらい。

だが...こんな経験は、ないから。

自分を助けてくれた人が危なくなる事なんて、なかったから。こんな方法しか、思い付かなかった。正しい方法が、分からなかった。



妹の教室に辿り着くと、あの恐れられている3年の6人組が乗り込んでいた。

「橘芽依は、どこ?」

2年生は、迫力に圧倒されて口ごもる。誰も口を開かないのを見て、3年側がイラついて近くの机を蹴り倒した。それと同時に2年生女子から悲鳴が上がる。

「先輩が聞いてんだけど?...なめた態度とってると1人ずつぶん殴るぞっ!」


この6人の行いは、もはや停学や退学になるレベルだ。先生達も薄々気付いてるが、処分には、しない。

その理由は、この学校の唯一の強みが、日本一の強さを持つボクシング部だから。 この6人組のうちの男子4人はボクシング部の主要メンバーである。

この花守高校は、ここ数年、入学者が減少し続けている。学力は普通、部活も表彰されるような部はボクシング部以外1つもない。平凡な学校の強力なPRポイントを作ってくれてるのがその4人のため、先生達は手放せない。だから、ここまで好き勝手出来るのだ。


教室内では、6人が2年生を鋭い目付きで睨むなか、2年生の1人の生徒が震えながらも立ち上がった。

「芽依に...何の用ですか...?」

「千春ちゃん、止めなよ...」

クラスメートに止められながらも千春と呼ばれた女子が、さらに続ける。

「お話し...じゃないんですよね...?」

すると今度は3年側の女子2人が、千春と呼ばれた女子を囲み、睨み付ける。

「あいつさ。うちらの"遊び"を邪魔してくれたんだよ。木部の野郎にイチゴパンを買わせて、もし買えたら、他のヤツに奪わせて、買えなかった罰を与えようと思ったのにさ。あいつノコノコとイチゴパン持ってきたんだよ」

「イチゴパン奪う役のヤツに聞いても、“自分は確かに取った!”の一点張りで、周りのヤツに聞いたら、“橘芽依が木部に渡していたのを見た”って言ってたんだ。正義のヒーロー的な?あー...


腕の一本ぐらい折りたいぐらい腹が立つ」

その一言に、その場や、僕の背筋が一気に凍るのが分かった。

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