第16話
家に帰り、部屋に入るとすぐにノックされた。
「どうぞ」
返事をすると珍しく兄が部屋に入ってきた。「...何?」
すると握られた右手を差し出され、私はその下に右手を開いた状態で出す。そこに置かれたのは、150円だった。
「...あ、ありがとう......助かった...」
兄からの初めてのお礼に感動を覚えた。
「...今日は顔に傷無くて良かったじゃん」
素直に喜べばいいものを、こんな言葉しか出ない自分はやはり可愛いげないなと痛感する。
「...ど、どうして分かったの...?パン買えって言われた事......」
前言われてるのを見た、そう言おうとして止めた。千春の事を言い訳にして逃げた事を言いたくなかったし、そういうの見られたくないと思ったから。
「あなたの性格を考えたら、例え取られても自分が食べるものなら、普通に許しちゃうと思う。でも、目の泳ぎ方が尋常じゃなかったから人に頼まれたのかなーって思ったの」
そう言うと、兄は目をそらし、メガネをかけ直す。
そして、何も言わず、そのまま出て行ってしまった。
「何かマズイ事言ったかな...?」
兄の行動の意味が理解できず、私は頭を悩ませた。
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