第6話
3人で回転寿司にやって来た。
「さ、好きな物頼んで良いからね!」
佳代子さんがタッチパネルを慣れた手つきで操作していく。
「芽依ちゃん...いや、親子になるから呼び捨てで呼ぶわ。芽依、何食べたい?」
「んー...サーモンかな」
私は好物のサーモンを選んだ。
「昔から好きだったわねー。和志は?何にする?」
佳代子さんの隣に座る兄は、ひたすらスマホを触っていた。
「こら、スマホ仕舞いなさい!」
佳代子さんに怒られ、渋々ポケットに仕舞う兄。マナーも悪い兄に冷たい視線を送った。
「んで?何にするの?」
「......何でも...いい...」
「何でもって...」
困惑する佳代子さん。もう見てられなかった私が佳代子さんの代わりにパネルを操作する。
「とりあえず、サーモン3つで注文しといたから」
「あ、ありがと...」
佳代子さんにお礼言われるも、何かぎこちなかった。そして、佳代子さんが兄の方を見る。兄は、目が泳いでいた。
「...ダメなんだ......わさび抜きじゃないと」
兄の言葉に私の中で切れる音がした。
「なら、最初からそう言えよっ‼」
「.....母さんがすると思ったから.........母さんなら、分かってるから......」
「はぁ⁉」
立ち上がろうとする私を、佳代子さんが止めに入った。
「ごめん、芽依。...和志、わさびぐらい取り除けば良いじゃない。せっかく頼んでくれたんだから」
「............」
納得はしてないような表情で、兄は小さく頷いた。
「ほら、来たわよー。今日はお祝いだから、パーッと食べましょう!俊介には内緒ね♪」
懸命に場の空気を変えようと、盛り上げてくれる佳代子さんを見て、私は感情的になったことを反省した。楽しいご飯の時間を台無しにしてしまうところだったと。
兄も、それからは何も言わず、丁寧にわさびを箸で取り除き、注文したサーモンを口に頬張った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます