第16話 『花咲か爺さん』をリメイクしてみた
「ライバルって大事と思わない?」
「盛り上げ要素には必要だな」
「そう。互いに競い合い、高みに昇っていく展開に熱くならない読者はいないわ」
さて、このパターン。
次の展開は読めた。
「何のリメイクだ」
「『花咲か爺さん』よ!」
今回は比較的まともなチョイスだ。
見方によれば正直じいさんと意地悪じいさんはライバル関係と見れる。
正直じいさんの方はその優しさでどんどん裕福に。
意地悪じいさんはその曲がった性根でどんどん落ちぶれていく。
「だが、この話に対決の構図を入れる気か?」
「その通りよ!」
そして、いつもの惨劇が幕を開けた。
「『おじいさん、ここ掘れワンワン!』『おや、ポチ。ここを掘れと言うのか?』」
いつもこいつの語りは最初は普通だ。
「『待て! おじいさん、そいつに騙されてはいけない!』」
「何か出て来たぞおい」
そしてこうなる。
「『お、お前は……ポチ?』『いえ、私はポチではありません。我が名はシロ。私こそ、あなたの本当の飼い犬です!』」
「何でここに対決要素を入れた」
「『ウソを言うな!僕が本当のおじいさんの犬だ!だって、歌でも「裏の畑でポチが鳴く」って言ってるじゃないか!』」
「確かに」
この話の歌はかなり有名だ。
裏の畑でポチが鳴く
正直じいさん掘ったれば
大判小判がザクザクザクザク
俺もポチだと記憶していたが。
「『何を言う。絵本ではシロが主流。お前こそ後で作られた歌で正当性を主張するとは片腹痛い!』」
「マジか」
「マジよ。アニメでもシロだったわ」
シロとポチの二つがあるのか。
「『フッ……有象無象の二次創作物どもめ』『誰だ!?』」
「また何か出て来た」
「『この俺こそが本物。この御伽草子の「犬」がな!』『原作!』」
「原作かよ!?」
「『そもそも原作では無名。勝手に人の名を名乗るな』」
犬だろお前。
「『おじいさん。誰の記憶にも残ってる「ポチ」が本物だよね!』『もっとも普及している「シロ」ですよね!』『原初の存在たる俺に決まっているだろう』『わ、儂は……』」
何だこの光景は。
「『仕方ない。ならば真の花咲か爺さんの犬を決めようではないか』『仕方ありませんね』『そんなー』」
「そこを競い合うのか!」
意地悪じいさんはどこへ行った。
「『真の犬ならばおじいさんをこの話の中で幸せにできるはずだ』『それならボクがさっき言った所を掘ってよおじいさん』『ここを……? おおっ、これは!』『おじいさんの掘ったところから大判小判が出てきました』」
「まあ、歌にもあるからな」
「『へへーん。どうだ!』『その程度……私の方が上です。おじいさん、ここ掘れワンワン』『ここを……? おおっ、これは!』『何と、掘った所から石油が』」
「シロすげえな!?」
「『掘り当てた石油利権でおじいさんは一気に大金持ちに』」
「言わんでいい!」
「『どうです?』『フン。仮にも歴史に名を遺す犬として恥を知れ。おじいさん。ここ掘れワンワン』『ここを……? おおっ、これは!』『何と、掘った所から遺跡が』」
何かとんでもない物出た!?
「『遺跡まで掘り当てたおじいさんは一躍時の人に』『どうだ』『ぐぬぬ』『くそー』」
「それでいいのかおじいさん」
「『ひひひ……富も名声も儂の物じゃ……』」
「おじいさん人格変わってる!?」
正直じいさんはどこへ行った。
「『おじいさんは、自分の欲望に正直になったのです』」
「そこ正直にしたらダメだろ!?」
「『お金とは、人の心を簡単に変えてしまう恐ろしいものでした』」
「教訓にするな!」
「『おじいさんは、その財力で三匹の犬を全て引き取り、幸せに暮らしました』」
「『花咲か爺さん』はどこへ行った!?」
「『そう。おじいさんは枯れた人生の最後に一花咲かせたのです』」
「そっちの意味かい!」
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