昔話をリメイクしてみた

結葉 天樹

第1話 時代はリメイク

「時代はリメイクよ」

「また妙な事を考え付いたな?」


 部長が不穏な事を言い始める。

 こいつは何かに影響されてすぐに人を巻き込んで何かをしようとする。

 今回は一体何を考え付いたのか。


「心外ね。我が文芸部に新たな風を入れるいい機会じゃない」

「風を入れるどころか風穴を開けているのは誰だ」


 巻き込まれた結果、大体はろくなことにならない。

「話のネタになる」と言われて妙なバイトに参加させられたり、携帯も使えないような山奥からサバイバルで家に帰らされたりまともじゃない。


「大丈夫よ。今回は部室からは出ないから」

「……火器の類は」

「使わないわよ」

「なら話を聞こう」

「信用無いわね」

「勝ち取ろうとしたことがあったか?」


 腕組みをして考えている。

 そもそも考えるほど覚えがない時点で問題なのだが。


「まあいいわ。さっきも言ったけど時代はリメイクよ」

「どういう意味だ?」

「昨今、90年代の漫画やアニメが現代バージョンでリメイクされたりしてるじゃない?」


 確かに。映画化もしている奴だってある。


「そこで思ったのよ。一から作品を作るのではなく、既にある作品をリメイクさせることでも良い作品を作れるんじゃないかって」

「まあ、土台がしっかりしているからあまり変なストーリーにはならんだろうな」


 満足そうに部長が何度も頷く。

 久々に文芸部らしいまともな話になっている。


「で、リメイクする作品とやらはどうする気だ?」

「誰もが知っている話がいいわね」

「そんなのおとぎ話とかくらいしかないだろ」

「良いじゃない、おとぎ話や昔話」

「その辺をリメイクするのか?」

「今の時代に合わない点もあるから部分的にグレードアップさせる感じで行こうと思うの」


 嫌な予感がしてきた。


「グレードアップだと?」

「ええ。折角なら演出は派手に行きたいわ」

「センセーショナルなおとぎ話など聞いたことがないぞ」

「だから私たちが作るのよ。この業界、作ったもの勝ちでしょ?」


 それはそうだが、果たしてまともなものが作れるのだろうか。

 俺は一抹の……いや、大いに不安を抱くのだった。

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