第8話 『金太郎』をリメイクしてみた

「ねえ、『金太郎』のストーリーって知ってる?」

「知ってはいるが……最後まで語れる自信はないな」


 桃太郎・金太郎・浦島太郎と『太郎』と言えば有名どころの筆頭に挙げられるこの金太郎だが、昔話の内容の知名度は低い。


「ちょっと調べてみたけど、やっぱり盛り上がる点が弱いからだと思うのよ」

「確かに桃太郎の様に鬼と戦うシーンも無ければ、浦島太郎の様に不思議な体験もないな」


 金太郎のストーリーはクマと相撲を取り、山の動物たちと力比べをしたり、金太郎がその力で木を折って橋を架けると言ったものだ。

 元ネタが源頼光の部下、坂田金時と言う事もあり、ラストは史実に沿って偉い侍の家来になって悪い奴らを倒したと言う終わり方だ。


「と言う訳で、『金太郎』のリメイクを行います」

「それは良いが、どうやって盛り上げる気だ」

「ちょっとだけ暴力シーンあるけどいい?」

「残酷描写が無ければ許そう」

「そこは大丈夫」


 血は出ないらしい。

 それならば許可を出してみてもいいだろう。


「『昔々、足柄山の山奥に金太郎と言う男の子がいました』」

「珍しく普通に始まったな」

「『金太郎の友達は山の動物たちです』」


 最近はとんでもない始まり方からだったから、何か新鮮な気分だ。


「『熊あああああああああ!』『金太郎おおおおおおお!』」


 前言撤回。やっぱりいつも通りだ。


「『金太郎頑張れ! 熊さんも負けるなああああ!』『うおおおお!今日こそお前に勝ってやる!金太郎おおおおお!』『俺も、負けるわけに行かねえんだよおおおお!』」

「何だこの熱血漫画な展開は」

「『く……くそ。また負けた。一体何が足りないと言うんだ俺は!?』『悲しみ……それが俺を強くした』」

「無想転生でも纏ってんのかこの金太郎」


 異様に劇画調なタッチで脳裏に再現されたぞおい。


「『今度は山の動物たちとの綱引きです』」

「ナレーションの温度差すげえな」

「『死ねええええええ、金太郎おおおおお!』」

「死ねって言っちゃったよ!?」

「『く……くそっ、こんな所で……俺は……負けるわけには……行かねえんだあああああ!』」

「無駄に熱い」

「『動物たちの中にはアメリカバイソンやユニコーンやTレックスも居ました』」

「山の生態系どうなってんだ!」


 幻想種や古代種までいるぞ。


「『綱引きも金太郎の勝ち』」

「どうやって!?」

「『ある日、Tレックスに乗って山道を歩くと谷の所で動物たちが困っていました』」

「Tレックス、熊枠かよ!?」

「『どうした?』『橋が無いから向こうに渡れないんだ』『俺に任せろ』」

「これで体当たりして木を折って橋を架けるんだったな」

「それじゃ普通じゃない」

「何だと?」

「『金太郎は山に体当たりをしました』」

「待て」

「『すると大きな山は簡単に動いてしまい、谷は隙間なく埋まりました』」

「『これでよかろう』『わーいありがとう!』」

「少しは疑問を抱け!」

「『その後、穏やかな心を持った金太郎は激しい怒りによって伝説の戦士に目覚めて悪い者を次々とやっつけたということです』」

「サイヤ人かよ!」


 金って髪の色のことかよ!?

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