第19話 『白雪姫』をリメイクしてみた

「IFストーリーなんてどうかしら」

「もしもこうなっていたらと言うパラレル設定のあれか?」

「そうそう。あえて知っている結末にならなかったバージョンを作るのもリメイク作品にありがちじゃない?」


 それを言ったらここまでの話自体がIFなのだが、まあそれは置いておこう。


「で、何をリメイクする気だ」

「白雪姫」


 随分とメジャーな奴が来たな。


「どこをIFにする気だ」

「王妃が白雪姫殺害に成功します」

「待て」


 根本から変えてきやがった。


「主役が死んでどうする」

「主役が死ぬ物語なんて山ほどあるじゃない」

「身も蓋もねえな」


 つまり、メインは王妃の方になると言うことか。


「スピンオフに近いな」

「こう言うのも面白いでしょ?」


 それには同意する。

 だが、この後どうする気だ。


「白雪姫が死んで、その後はどうなる?」

「『鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?』『それはシンデレラです』」

「クロスオーバーかよ!?」

「『シンデレラを殺せば私が一番……そう考えた王妃はシンデレラの国に向かい、彼女を殺してしまいました』」

「シンデレラーっ!」


 犠牲者を増やしやがった。


「『ふふふ……これで私が……鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰?』『それはかぐや姫です』」

「おい!?」


 まさかこいつ、古今東西の美しい女性を殺しまくるつもりか。


「『かぐや……それは何者?』『極東の国にいる女性です』『王妃は日本へ旅立ちました』」

「行動力すげえな!?」


 そこまでやるか。


「『かぐや姫って女がこの国にいるって聞いたんだけど?』『ああ、かぐや姫ならこの間月に帰っちまったよ』『……』」

「無駄足じゃねえか!?」


 はるばる日本まで来ておいて酷い仕打ちだ。


「『ただいま』『お帰りなさいませ』『……鏡よ鏡。世界で一番美しいのは誰? ちなみに月は除外して』『それは人魚姫です』」

「難易度高いの来た!?」


 海の中じゃねえか。


「『人魚姫……海の中ね』『王妃はダイビングのライセンスを取りに行きました』」

「そこまでやるか!?」


 何だこの王妃のバイタリティは。


「『王妃は旅の末、人魚姫を見つけました』『あなたが人魚姫ね……てっきり海の中にいると思ったら何で陸にいるのよ! つーか、何で足があるのよ!?』『……!』」


 何か王妃が可愛く見えてきた。


「『まあいいわ。あなたを殺せば私が……って、どうして何も喋らないのよ?』『(身振り手振りで説明)』『え、何。人間の足を、もらう為に、声を魔女にあげた?』『(頷く)』『で、王子様とはどうなったのよ?』『(悲しそうな眼)』『……元気出しなさいよ』」


 同情しやがった。


「『で、王子様殺せば人魚に戻れるのね。やっちゃいなさいよ』『(首を振る)』『何でよ……ちょっと、何でそんな所に立つのよ。ねえ、あんた。待ちなさい! 死んじゃダメ。生きていれば良い事なんてああああ!』『人魚姫は泡となって消えてしまいました』」

「きつすぎるわ!」


「『……ただいま』『お帰りなさいませ』『……ひっく……鏡よ鏡……グス。世界で一番美しいのは……ヒック……誰?』」


 何だか王妃が可愛そうに見えてきた。


「『それは乙姫様です』『誰よ』『竜宮城にいる姫です。ちなみに海中です』『海……うえええん!』」

「トラウマになってんじゃねえか!?」

「『海も月もいいから。地上限定でお願い』『わかりました。この世で一番美しいのは……すいません。名前がわかりません』」

「何故」

「『どういう事?』『公式に名前が設定されていなくて』」


 メタ発言を盛り込むな。


「『どこの女?』『他国のお城にいまして……城が茨に覆われています』」

「眠れる森の美女か!」

「『その程度の困難。美しさの為なら怖くないわ!』『王妃様は城に向かいましたが、青い顔で帰ってきました』」

「今度は何があった!?」

「『うっぷ……城の周りに、茨に絡まった死体がたくさん』」


 確か侵入を図って失敗した奴らだったか。

 それは確かに嫌だ。


「『寝ているのも除外で良いわ』『では……あ、北の町にいますね。名前はわかりませんが、雪が降る中でマッチを売ってるのですぐにわかりますよ』『OK、行ってくるわ』」

「マッチ売りの少女か!」

「『王妃様は町に向かいました』『あの子ね……ちょっと、何で誰も買ってあげないのよ。あ、マッチを擦り始めた。なんかブツブツ呟いてる……ヤバいわ』『王妃様は倒れた少女を保護すると城に戻りました』」

「保護するのかよ!?」

「『ちょっと誰か、毛布持って来なさい!』『王妃様、その子が死ねば一番に戻れるんですよ?』『自分で殺すのは良いけど、目の前で死なれるのはもう嫌なのよ!』」

「めんどくせえなこの王妃!」

「『おばさんは誰……?』『この国の王妃よ』『帰らないとお父さんに怒られます……』『……もうあんな町に帰る必要なんてないわ。行く所がないならここで暮らしなさい』」

「おい!?」

「『王妃様、良いんですか?』『いいのよ。世界一美しい少女なら私の娘になる資格はあります……正直言うと、もう疲れたわ』」

「良い話っぽくまとめるなよ!?」

「『こうして引き取られた少女は、雪の降る町で引き取られたことから「白雪姫」と呼ばれるようになりましたとさ』」

「元の白雪姫が浮かばれねえ!?」

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